93話 ページ3
・
「遅れてごめん！」
がちゃり、リビングの扉が開いて、2人が入ってくる。
まふくんの後ろから顔を覗かせた天月くんが、開口一番に謝ってくれた。
普段のみんななら絶対許してくれるけれど、今は何せドッキリ真っ最中。
誰もその謝罪に答えず、代わりにうらたさんがわざとらしく腕時計に目を落とす。
「なー、今何時だと思ってんの？」
「っ、」
そのうらたさんの言葉に、早速まふくんが笑いを堪えるように息を詰めた。
必死に天月くんに見られないようにしながら、口をもにょもにょさせている。
おまえ絶対ドッキリ向いてないぞ。
坂田もそのまふくんの表情に釣られたのか、慌ててスマホに視線を逸らしてた。ドッキリ向いてないやつばっかかよ。
「さ、15時20分……デス」
「集合時間、わかってるよね？」
「ハイ」
うらたさんだけはさすが演技派というか、……普通に怖いのだが。
この人本気で怒ってない？大丈夫そう？
俺は別にポーカーフェイスは得意だから笑いを堪えるとかはないけれど、うらたさんみたいにノリノリで怒り演技ができるわけではない。
やっぱり黙ってうらたさんと天月のやりとりを見守ることにした。
「……さすがに2時間は待たせすぎかな」
まふくんが心を持ち直したのか、静かな声色で参戦してくる。
さっきまで口をもにょもにょさせていたとは思えないその切り替えに、俺は素直に感心した。
「本当ごめん。反省してます」
「ごめんって言うならさぁ、こんな遅刻しないでほしいよね」
坂田もスマホからは目を上げないまま、しっかり怒ってる風を装っている。
コイツも笑いはきちんと抑えたらしい。さすがプロ。
──こうなると、俺も何か言わないといけないわけで。
カメラも回っているわけだし、……ということはここも後々動画になるんだろうし。
さすがに黙って聞いているだけじゃ、動画的に盛り上がらないよな。
天月くんの方に目をやると、どうやら彼もこちらを見ていたらしい。バッチリ目が合った。
──自分なら怒っているとき、どうするだろう。
考えて、すぐに天月くんから目を逸らす。
俺は激しく怒るタイプじゃないな、と分析して、なるべく静かな声を出した。
「……連絡くらいは、してほしかったかな」
寝坊なんだから連絡なんてできるはずもなかったのに、これしか言うことが思いつかない。
つーかあんまり怒ってるように聞こえないよなこれ、なんて言った後に気付いた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暁☆(プロフ) - 月さん» 月さん！コメントありがとうございます✨️ 私の作品がきっかけでなんて、ほんとにほんとに嬉しいです！彼らの魅力が伝わっていたのなら、字書きとしてこんなに幸せなことはないです💕 15回目すごすぎます、行ってらっしゃいませ！笑 (10月14日 10時) (
レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
月 - この小説から大手歌い手さんにハマって、今や推し変して大好きになりました。きっかけを作ってくださってほんとにありがとうございます！何度も読み返したけれど、何だか勇気を貰える作品でとても好きです。更新楽しみに15回目行ってきます！ (10月13日 0時) (レス) id: 910387af12 (このIDを非表示/違反報告)
琉茄(プロフ) - 暁☆さん» 暁様のペースで更新してくださいね？急かしたい訳ではないので！のんびりと更新を楽しみにしてます！ (7月22日 14時) (レス) id: 50567171bf (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 琉茄さん» とっても嬉しいコメントありがとうございます✨️✨ すごく励みになります！Part1からなんて……！たくさんお待たせしてしまっていて申し訳ないです🙇♀️ もう少し更新できるように頑張りますね！ (7月20日 22時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
琉茄(プロフ) - Part1から読ませて頂いております！読み手を惹き付けるとても素敵な作品だと思います！更新頑張って下さい！！！ (7月18日 23時) (レス) id: 50567171bf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：暁☆ | 作成日時：2023年7月12日 21時
