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「、おいしい」
考える間もなく声が零れて、その零れた言葉にイケメンさんは嬉しそうに笑う。
チョコレートなんかに負けないほど、あまい魅力的な笑顔だった。
「ほんとですか？良かった」
ふにゃん、周りの空気ごと柔らかくなって、釣られて仕事で疲れていた私の心も柔らかくなる。
イケメンさんは嬉しそうな笑みを浮かべたまま、私の正面の椅子に腰掛けた。
「今新作考えてて、いろいろ作ってるんです。俺チョコレートが得意だから、そっち系で何か作りたいなって思ってて」
私がもぐもぐ食べる様子を見ながら、イケメンさんが話を続ける。
ショーケースを挟んでいたときより、いくらか砕けた口調になっているような気がした。
……それにしてもこれ、本当に美味しい。
私今、こーゆうチョコケーキが食べたかったんです。
あまいあまい、疲れを吹き飛ばしてくれるような、あまーい幸せなチョコレートケーキ。
「……ふ、」
もぐもぐ、幸せな甘さを噛み締めていたところで、目の前に座る彼が小さく笑った。
テーブルに肘をついて、心底嬉しそうに目を細める。
「お姉さん、すごい幸せそうに食べてくれるやん」
──そのあまりにも柔らかな
さっきまでキチッとした敬語だったせいで、突然その口から零れた関西訛りの口調にも胸が鳴る。
え、このひと方言使うの。こんなに綺麗でかっこいい、The都会人、みたいなお顔なのに。
……なにそれ、可愛い。
ギャップ萌え、という単語が私の脳裏をちらついた。
「……っだ、だって、本当に、美味しくて」
どくどく忙しなく動く心臓を誤魔化すように、必死に言葉を紡ぐ私。
イケメンさんは余裕たっぷりに笑いながら、「食べてくれたのがお姉さんで良かった」なんて口説き文句を言ってきた。
──そんなキザな言葉でさえも似合ってしまっているのだから、イケメンはずるい。
「私こそ、こんな美味しいケーキいただけて嬉しいです。……あの、やっぱりお金、払いたいです」
ただこんなに綺麗で美味しいチョコレートケーキを、タダでいただけるなんて申し訳ない。
しかもさっき買ったタルトも安くしてもらっているのだから、尚更。
そう思って私はお金を出したいと申し出たものの、彼は笑顔で首を横に振った。
「──お姉さん可愛いから、サービスさせて」
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続く (更新停止中)
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作者名：暁☆ | 作成日時：2023年6月15日 0時
