54話 ページ9
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「こうやってさ、Aちゃんと2人で走るの初めてだよね？」
私の少し前を走る真波くんが、風に負けないように大きめの声で話しかけてくる。
私はこくりと頷いて、それから真波くんには見えないことに気付いて慌てて声をあげた。
「うん。マネージャーは見てるだけだから」
風を切る音が気持ちいい。
自然とこぼれてくる笑みを噛み締め耳を澄ますと、真波くんがギアを1段上げる音が聞こえてきた。
「オレそれずっと気になってたんだけどさ、見てるだけって楽しいの？」
少し、真波くんのスピードがあがる。
置いてかれないように私もギアを上げると、ペダルが少しだけ重たくなった。
ぐ、と踏み込むとその分景色が後ろに流れる。
この感覚に魅了されたのが自転車乗りなら、私はやっぱり違うんだろうな、とうっすら思った。
「楽しいよ。…私ね、自転車に乗ることだけが好きなわけじゃないんだ」
もちろん、自分の力だけで前に進んでいくこの乗り物に惹かれたのも事実。
漕げば漕ぐだけ速くなるなんて、楽しくて楽しくて仕方ないのもわかる。
──でも私は、それ以上に。
「自転車そのものが好き……ううん、自転車に乗ってる人が好き、なのかな」
その私の言葉に、真波くんがきょとんと振り返った。
鮮やかな青い髪が風で乱れるのに、アホ毛だけは綺麗にぴょこんと残っている。
「何かね、何だろう。音とか空気とか…そういう、自転車に乗ってる人が出す目に見えないものが好きというか…」
自分でも何を言っているのかよくわからなくなってきたけれど、真波くんは真剣な目で聞いてくれていた。
私はそれに安心して言葉を続ける。
「レース前の緊張した空気とか、高揚感のある空気とか。ふとしたときに緩む空気も好きだし、自転車を降りたときの緊張の糸が切れる瞬間も好き」
変態みたいだなぁ、と自分で言っていて思った。
でも私は確かに、このロードバイクが人に纏わせる空気が、雰囲気が好きなのだ。
「クリートがはまる音は気持ちいいし、ギアを変える音はワクワクする。それから風を切る音も好きだし…」
あげだしたらキリがない、それくらいに自転車の色々が好き。
真波くんは小さく笑って、それから不意にスピードを落とした。
私の横に並び、だからかぁ、と何かに納得したような声をあげる。
「オレずっと不思議だったんだ。乗れない人が見てるだけってのはわかるけど、乗れる人が見てるだけってキツくないのかなって」
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暁☆(プロフ) - poyocooooooさん» コメントありがとうございます！そんなことを言っていただけて光栄です✨️ 荒北さんも手嶋さんもとってもかっこいいですよね！推しを布教できて何よりです！笑 (4月30日 22時) (
レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 弱ペダの作品あまり見かけない中でこんなに素敵な作品に出逢えてとても幸せです♡荒北さん推しだった私ですが、この作品を通して見事に新開さん推しになりました😍個人的に総北で手嶋さんと絡めたのが嬉しかったです✨手嶋くんいいですよね…！ (4月26日 4時) (レス) @page28 id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 名無し20182号さん» コメントありがとうございます！！嬉しいです🥰 更新頑張りますね！ (8月23日 0時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
名無し20182号(プロフ) - 神作すぎて一気見しちゃいました💞めちゃめちゃきゅんきゅんします！！更新応援してます❕ (8月17日 21時) (レス) id: f1e05d66bf (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ちるちるさん» コメントありがとうございます！！ 嬉しいです、頑張ります😭 (5月31日 14時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：暁☆ | 作成日時：2020年12月14日 21時
