箱学1年マネージャーはチャリ部男子に迫られてます。~Part2~【弱虫ペダル】

65話 ページ20

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「…ん、うまっ」


ぱくりと新開さんの口の中へと見えなくなった卵焼き。

本当に幸せそうに目を細めてくれるから、美味しいと言ってくれるから、私も嬉しくなって小さく笑い返した。


「俺料理とか全然しねえもんな。……あ、靖友は案外上手いんだぜ」


たまに夜食作ってくれるんだ、と楽しそうに笑う新開さん。……荒北さんって面倒見がいいよね。


「先輩たち、ほんとに仲がいいですよね」

「そうか？まあ寿一とは中学からだもんなぁ、もう6年目だ」


いいなぁ、と少しだけ羨ましくなる。

私はまだ新開さんと出会って3ヶ月も経たない。

私の知らない新開さんを知っている福富さんが羨ましくて、そんなことを考えた自分にびっくりした。……私って実はかなりめんどくさい女なのでは。


「……あの」


自分がめんどくさい女だと自覚してしまったのは悲しいけれど、新開さんのことをもっと知りたい気持ちは無視できなかった。

思い切って、カツサンドを齧っている新開さんに声をかける。

彼はすぐにカツサンドから私に視線を移して、ん？と首を傾げた。


──……好きだな、と思う。
声をかけたらまっすぐにこっちを見てくれるところが。
相手を見てしっかり話を聞こうとしてくれる、その優しさが。


「新開さんが1番好きな食べ物は、何ですか？」


好きだから、もっともっと色んなことを知りたい。

だって私は新開さんの好きなものも嫌いなものも、全然知らないのだ。推理小説くらいしか。


新開さんはキョトンと目を瞬いて、それからふっと微笑んだ。


「なんだろうな、食えるもんならだいたい好きだけど」


チョコかなぁ、と首を傾げられる。
前々から思っていたけれど、新開さんって甘いものが好きだよね。

菓子パンなんかよく齧っているし、私の作る卵焼きも割としっかり甘めだ。

……あ、そういえばかなり前に1度だけ貰ったパワーバーもチョコ味だったっけ。


「あ、バナナも好き。自販機にあるバナナミルクがすげえ美味いんだぜ」

「いちごみるくじゃなくてバナナなんですね？美味しそう！」


毎日水筒を持参している私はあんまり自販機をまじまじと眺めたことはないけれど、新開さんが好きだと言うのなら今度探してみようか。



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