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36話 ページ39










──翌日。

1限と2限のあいだの休み時間。次の授業が音楽で、教室移動のために葵ちゃんと廊下を歩いていたところ。


「Aちゃーん!」


よく通る間延びした声に、呼び止められた。

前から走ってきた青い髪が、私のちょうど目の前で止まる。


「真波くん、校内で会うのなんか珍しいね…ってもしかして遅刻?」


私の言葉に、にっこり笑顔を返してくる男の子──…真波くん。

彼のクラスと私のクラスは階が違うから、同じ学年とはいえなかなか校内で会う機会はない。

もう1限は終わったというのにカバンを持ったままの真波くんに、私は呆れて苦笑を零した。


「あはは、坂が呼んでてさー」


ふわふわと笑いながらそんなことを言ってくる真波くん。
荒北さんいわく彼は『不思議ちゃん』だ。


「さっき山で人助けしてきたんだ、俺。自転車乗る子。眼鏡で……目が綺麗だった」

「人助け?」


もうこの際、学校をサボって山を登っていたことには突っ込まない。

小さく首を傾げると、真波くんは左手に持った遅刻届をヒラヒラさせながら詳しく教えてくれた。


「なんか山で行き倒れ?てる人がいて。喉乾いてるみたいだったからボトルあげてきちゃった。そういえば名前聞くの忘れてたや」


普段は掴みどころのない真波くんだけど、知らない人でも助けてしまう優しさを持っているのは、もちろん私も知っている。

…学校サボったことはいただけないけど。


「ふふ、そっか。真波くんは優しいね」


思ったことを正直に告げると、真波くんはその大きな青い()をぱちりと瞬いた。

それから少し、照れくさそうに微笑む。


「Aちゃんに言われるとなんか照れるね。ありがとう」


そんなことを言い残し、真波くんは手を振って行ってしまった。

隣でずっと黙っていた葵ちゃんが、私を見る。


「Aってすごいなぁ。今の真波山岳くんでしょ?うちのクラスにも結構かっこいいって言ってる子いるよ」


こないだは新開先輩だったし自転車部ってすごい、と目を輝かせる葵ちゃんに、私は苦笑を零した。

確かに自転車部はかっこいい人が多い。
……けどわざわざ私なんかに話しかけてくれるのは、私がすごいわけじゃなくて。


「みんな優しいから話しかけてくれるだけだよ」


何か私に特別なものがあるとするのなら、入学式の日に新開さんにロードを見られたということ。


──たったそれだけで人気者と話せているということに、少しの罪悪感が湧き上がった。


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設定タグ:弱虫ペダル , 箱根学園 , 新開隼人   
作品ジャンル:恋愛
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時

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