検索窓
今日:18 hit、昨日:26 hit、合計:154,871 hit

30話 ページ33





福富さんが帰って数分後。


サーヴェロを引いてきた新開さんが、私の前で止まった。

いつもみたく柔らかい笑みを浮かべる。


「お待たせ。急にごめんな」

「いえ、新開さんと走れるの嬉しいです!」


正直な気持ちを言えば、新開さんは嬉しそうにそっか、と言ってくれた。

新開さんの低い声が弾むのを聞くと、こっちまで嬉しくなってしまう。


「いつものコースを1周まわろうか。Aちゃんもわかるよな?」

「はい!」


新開さんに続いてロードに跨った私は、大きく頷いてみせた。


彼の少し後ろを、自慢のキャノンデールでついていく。


いつもは饒舌…ってわけではないけれど、ゆったりと会話してくれる新開さんは今日は静かで、何だかそれが落ち着かない。



国道1号線を下りきったところで沈黙に耐えきれなくなった私は、そっと口を開いた。


「…あの、新開さんってスプリンターでしたよね」


最初の頃抱いていた私の予想は間違いではなかったらしく、東堂さんから貰った部員のデータに、彼はスプリンターだと書かれていた。

ちなみに福富さん荒北さんはオールラウンダー、東堂さんは知っていたけれどクライマー。
真波くんも自己申告通りにクライマー。黒田さんもクライマーで、泉田さんはスプリンターだ。
それから銅橋くんがスプリンターだったのも覚えている。


「うん?急だな?そうだけど…」


振り返って首を傾げる新開さん。

そんなちょっと大袈裟な動作も、彼には何故か似合ってしまうのだから不思議だ。


「えっと、やっぱり予想通りだなってずっと思ってて。新開さんは速くてかっこいいって泉田さんも言ってました」


元々は沈黙から抜け出すためについて出た言葉。

何て言って会話を繋げればいいのかもわからず、とりあえず頭に浮かんだ泉田さんの言葉を代弁しておいた。

ここ最近でわかったけれど、泉田さんはすっごく新開さんに憧れている。


「はは、そうか」


にっこり、新開さんがまた微笑んだ。

いつも飄々と笑っていて余裕があって、 かっこよくて。

…なのに今日の新開さんの笑顔は、どこか不安そうに見えた。


「……どうして、誘ってくれたんですか?」


そっと呟く。

新開さんは青い瞳を瞬いて、それから「ん?」と聞き返した。


「今日。何か私に、言いたいことがある…ん、です、よね」


ばくばくと心臓が鳴り響く。


図々しいのはわかってる。…でも、新開さんの不安を少しでも取り除けたらいい、なんて思ってしまった。


31話→←29話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (97 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
300人がお気に入り
設定タグ:弱虫ペダル , 箱根学園 , 新開隼人   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。