25話 ページ27
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「あっ、えっと黒田、さん。ありがとう…ございます」
スタスタと前を歩く黒田さんの背中に向かって、お礼を言う。
正直まだあの時言われたことにはムカつくけど、でも黒田さんが去年女マネに付きまとわれていたことは知っちゃったし。
…何よりお礼は言わなきゃいけないし。
「別に。たまたま通っただけだし」
返ってくるのは素っ気ない返事。…やっぱり苦手だ。
そのまま黙って彼の後ろについていくと、突然黒田さんが振り返った。
深い紺の瞳が私を捉えて、ゆらりと揺れる。
「……その、悪かった。前、酷いこと言って…」
ボソボソとした、謝罪の言葉。
急なその台詞に、思わず私は固まった。
──酷く言いにくそうにしているのに決して目は逸らさない彼は、不器用だけどまっすぐなんだろうな。
「えっと…わ、私も、黒田さんが去年女マネと嫌なことがあったって知らなくて。新開さんから聞いたんですけど」
まっすぐ謝られてしまうと、怒りなんてどうでもよくなってしまうのが私だ。
ぶんぶん首を振って、仲直りの意思も込めて笑ってみせる。
「助けてくれて、ありがとうございます。黒田さんが来てくれて良かったです」
私がそう言った途端、頬を赤く染める黒田さん。…もしかしてお礼に照れてたりする?
「っ部室行くぞ!てか東堂さんにさっきのこと言っとけよ!」
「え?黒田さんがかっこよかったってことですか?」
何だかそんな黒田さんが可愛くて、ついからかってしまった。
私の言葉にはあ!?と大きく声を荒らげた黒田さんは、つり上がった目で私を睨んでくる。
「東堂さんのファンにぶたれたってことだよ!あの人に言っとけば注意とかしてくれるし、もう何も無くなると思うから!!」
「ふふ、わかってますよ。でも東堂さんには言わなくていいです」
少し前にいた黒田さんに並びながら、笑って答える。…大丈夫、黒田さんは優しい人だ。
「はあ?また何かされるぞ。女子の嫉妬あんま舐めない方が…」
「大丈夫です。だって私がずるいのは本当だから」
その私の言葉に、黒田さんが立ち止まった。
さらりと銀色の髪が揺れる。…綺麗な色。
「別にずるくなんか…」
「あれ、Aちゃん!黒田!」
黒田さんの声をかき消すように、低く柔らかい、私の大好きなあの声が被さってきた。
思わず振り向いて笑顔をこぼす。
「新開さん!」
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時