22話 ページ23
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「あ、ありがとう!でもそこの椅子使えば届くし、銅橋くんは練習してて」
「はあ?もう外くれえだろ。女子はとっとと帰れ」
私の言葉も受け流して、高いところにある物干し竿にジャージをかけていく銅橋くん。
…もしかして銅橋くんって紳士?
口調こそ荒いし声も大きいけれど、そんな彼にも不思議と恐怖は感じなくなっている。
ぽかんとしながら彼を見ていた私は、しばらくして思わず吹き出してしまった。
「ふふ、銅橋くんって優しいね。マネージャーなんだからこれくらい当然なのに」
私のその言葉に、ああ!?と声を荒げる銅橋くん。もうちっとも怖くないよ。
「おまえバカじゃねえの?俺に優しいとか言っちまったらその辺の奴ら全員優しいだろ!」
そう言う彼は顔こそ怖いけれど、耳が赤くなっているのが見える。
恐怖なんかもうゼロだ。
ニコニコしながら聞いていると、銅橋くんはチッとまた舌打ちした。
「てめえ俺のこと怖くねえのかよ」
ガシガシと乱暴に頭をかく銅橋くん。
…気にしてたらしい。何か意外だ。
私はその質問には答えず、逆に気になったことを聞いてみることにした。
「銅橋くん、どうして3年生の先輩を殴ったの?」
単刀直入すぎただろうか。
銅橋くんは怪訝そうな顔をして、それからまたまた舌打ちをした。
「俺は悪くねえ!せっかくゴール前まで引いてやったのに飛び出せなかったアイツが悪ぃんだ!ぜってえ俺が最後に出るべきだった。実力もねえのに先輩面しやがったアイツが悪い!」
んん、銅橋くんの感情的な説明じゃ、あまり内容は把握できない。
…でも確か、その銅橋くんが問題を起こした大会で箱根学園は優勝を逃していた。
今の話を聞く限り、銅橋くんがゴール前まで3年生の先輩を引いたみたいだ。
でも先輩は、飛び出せなかった。…銅橋くんの引きが速すぎた、のかな?
…それで優勝を逃して、銅橋くんが先輩を殴った。なるほど、確かにムカつくのはわかる。
それにたぶん、銅橋くんは引くんじゃなくて飛び出したかったんだ、本当は。
でも先輩は3年生だから、花をもたせようとしたってところか。結局その先輩の実力不足で負けてしまったわけだけど。
…何となく殴った理由はわかった。でも殴るのはやっぱり悪いことだ。
「うーん…そうだったんだね。銅橋くん、感情的になると手が出ちゃうんだ」
ポツリと呟くと、銅橋くんは決まり悪そうに目をそらす。
洗濯物はもう全部、綺麗に干されていた。
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時