16話 ページ17
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新入部員含め、全員の揃った初めての部活が終わり、部室で洗い終わったばかりのジャージを干していたところ。
部活自体は終わったものの、3年生の先輩たちはまだ3本ローラーを回していた。
「Aちゃん、もう帰るかい?」
気が済んだのか、1番最初にローラーを終わったのは新開さん。
帰る用意をするためにロッカーの扉を開けた私に、優しい笑顔を向けてくる。
「はい、新開さんも終わります?」
「うん。送ってくから俺が着替えるまで外で待っててよ。Aちゃん寮だったよな?」
「えっそんなの悪いです!近いですし1人で帰れますよ」
思ってた以上に焦った声が出た。
いくら何でも学校から寮までなんて近すぎるしロードで行ったら一瞬だし、何より女子寮の方が男子寮より少し距離ある。
送ってもらうなんてことしたら、新開さんは二度手間だ。
すると新開さんはイタズラっぽく首を傾げて一言。
「まだAちゃんと話し足りなくてさ」
どくんと大きく心臓が脈打つ。
黙ってローラーを回していた東堂さんが突然出した大きな声に、さらに心臓が縮みあがった。
「ならん!ならんよ新開!何おまえAちゃんを口説いているのだ!彼女も困っているだろう!?」
「うるっせェよ東堂!!」
そんな東堂さんにすかさず噛み付く荒北さん。
福富さんだけは真面目にローラーしてて、何だか異様な光景だ。
こんなの1、2年生が見たらどう思うんだろう。
3年生の1軍選手たちが騒ぎながら3本ローラーに乗ってるところなんて。
「どうかなAちゃん。一緒に帰ってくれないかい?」
優しげに垂れた青い瞳がまっすぐに私を見てきて、あぁやっぱりこの人はずるい。
…そんな風に言われたら断れるわけないよ。
「…じゃあ、外で待ってます」
「よし、秒で着替えるから!」
満足げに笑う新開さんに1つ礼をして、それからカバンを持って部室を出る。
外に出ても先輩たちの仲の良い(?)言い争いは聞こえてきて、思わず笑みが零れた。
それから私は端に寄せて置いておいた自分のロードバイクに触れる。
キャノンデールのバイクだ。カシミアと呼ばれる白っぽいカラー。
シンプルで気に入ってるし、もうずっと私はこの子と走ってきた。たぶんこれからも。
早く乗りたいなぁとワクワクしていると、本当に秒で着替えてきた新開さんが部室から出てきた。
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時