11話 ページ12
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「A、俺も今から走りに行くから1年のことを見ておいてやってくれ。体調が悪そうなやつがいないかだけ注意しておいてくれればいい。練習の方は2年がサポートしてくれるだろう」
「はい!」
顔は怖いけど、やっぱり新開さんや荒北さんの言う通りに福富さんは優しい。
本当に怖い人ならきっと、わざわざマネージャーに部員の体調管理のことなんか頼まない。普通頼まれなくてもやることだもん。
「行ってらっしゃい福富さん」
そう考えたら全然怖いとは思わなくって、私は笑って福富さんを見送った。
それから言われた通りに1年生の部員さん──特に初心者組を中心に様子を観察する。
ペダルを回す音が色んなところから聞こえてきて、私これから毎日この音聞けるのか。すごい幸せじゃない?
ほくほくしながら練習を眺めていると、不意に声をかけられた。
「マネージャーさん、少し挨拶してもいいかな?」
イケボ、というやつだと思う。低い、耳に溶けるようなかっこいい声。
その声の方を見ると、そこには女の子みたいに綺麗な顔の男の子が立っていた。坊主だけど。
「あっはい!私、1年の美森Aといいます。よろしくお願いします!」
長いまつ毛が特徴的な彼は、優しげな笑みを浮かべて頭を下げてくる。
「ボクは泉田塔一郎。2年でスプリンターだよ。よろしくねAさん」
そして期待を裏切らない名前呼び。さん付けは初めてで何となくくすぐったいけど、真面目で優しそうな人だ。
「塔一郎、何サボってんだよ」
そこへ突然、誰かが泉田さんを呼びながらこっちに来る。
銀髪が綺麗な男の子だ。イケメンの部類に入るような顔をしている。
「ユキ!サボってないよ!今日のボクの練習メニューは筋トレだから、合間にマネージャーさんに挨拶しとこうと思って…」
ユキくん、というのだろうか。
焦った顔をした泉田さんがユキくんに向かってワタワタと手を振る。仲良さそうだな。
ユキくんはチラリと私を見て、それからつっけんどんに自己紹介してくれた。
「俺は黒田雪成。2年でクライマー」
「あっえっと1年美森Aです!」
ちょっと苦手かも、というのが第一印象。
ユキくん改め黒田さんは、今度はじとーっとした目で私を見てきた。
「何で先輩たち、コイツのマネージャー希望を許可したんだ?」
…やっぱり何か、この人苦手かも。
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時