1話 ページ2
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──箱根学園、自転車競技部。
自転車に乗ってる人なら誰でも知っているような、憧れの名前。
夏のインターハイでは優勝争いの常連。
王者箱学、そんな風に呼ばれることもしばしば。
私──美森Aは、そんな憧れの学校、箱根学園の大きな校舎を目の前に思わず立ち止まった。
──今日から私は、箱根学園新1年生になる。
小さい頃から、自転車が大好きだった。
レースにも何度か出たことあるけれど、勝ちたいとかそーゆうのじゃなくて、ただ好きなだけ。
自転車に乗るのが好き、見るのが好き、音が好き。
風を切る音、タイヤが回る音、ペダルを踏む音。選手の息遣い、ギアを変える音。
ただ自転車が好きなだけだった私は小学校でレースに出るのをやめてしまったけれど、観戦自体は続けている。
今でも趣味としてだけどロードバイクには乗っている。今日もロードで学校まで来たし。
私自身は速くなくていい。でも速い人を見るのは好き。
だから私はこの箱根学園の受験を決めたのだ。
家からの距離はあったけれど、箱学には寮があったから即入寮を決定した。
学力的には余裕もあったし、むしろ中学校の先生にはもう少し上を勧められたくらいだ。
無事に合格を決めた私は、今日から箱根学園の生徒。
──自転車競技部のマネージャーに、なりたい。
速い人を近くで見て、応援したい。
「──君、ロード乗るのかい?」
ぼんやりしながら校舎を見つめていると、突然声をかけられた。
びっくりして慌てて振り返る。
「あっ…はい、」
振り向いた先にいたのは、箱根学園の制服を来た男子生徒だった。
柔らかいパーマのかかった赤い髪。少し垂れた、優しげな青い瞳。
イケメン、というのだろう。現に私の胸も今高鳴っている。
「はは、驚かせてごめんな。ロード乗ってる女子珍しい気がして」
そう言って笑う彼は、やっぱりイケメンさんだ。年上だろうか。
私は引いていたロードバイクをチラリと見て、それからイケメンさんに視線を戻した。確かに女子で乗っている人は少ないかもしれない。
「えっと…自転車好きで…」
「そっか。急に呼び止めて悪かったな。新入生だろう?たぶんそろそろ行かないと遅れるよ」
もごもごと答える私に、先輩らしき彼が腕時計を見る。
そこで私も腕時計を確認すれば、結構ギリギリの時間だ。やばい。
慌てて彼に頭を下げて、私は自転車置場に向かった。
さすがに初日から遅刻は避けたい…!!
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暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» コメントありがとうございます!嬉しいです(*^^*) (2020年9月23日 17時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - ヤバい葵ちゃんタイプ (2020年9月10日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» すみません、ゆっくりお待ちいただけると嬉しいです (2020年8月29日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
断然ポカリ派民 - まだかな♪まだかな♪ (2020年8月28日 21時) (レス) id: 60ae0496f5 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 断然ポカリ派民さん» ありがとうございます(´˘`*)更新早く出来るように頑張りますね! (2020年8月16日 5時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年5月1日 0時