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水 ページ10
指先と指先の湿った温度だけが頼りだった。
一面真っ白で赤を散らしたくなる様な、そんな殺風景だった。
吹き荒れる木々の音がするが、私の目には木なんて映らない。
ただ、歩いていた。
彼の震えた手と見に余る寒さ、それがなければ私は今もう夢の中だと思っていたであろう。
共に歩いていた、ここがどこかも分からず、どこに行くかも分からず。
他はもう何処かへ行った。
深い深い峡谷へ落ちていった。
彼等の1人が残していった靴の片っぽは、すぐに吹雪に塗れ、何処に行ったかも分からなくなってしまったのを覚えてる。
引き返せない、引き返せるわけがない。もう見えない。辺り一面真っ白で、奪う体温も無いはずなのに、それなのに風は、無情にも私達を蹴る。
私達は彼等が峡谷へ落ちたのを最後に口を開かなくなった。
開けなくなった。
絶望と焦燥に塗れ、ゆらゆらと歩いていた。
ただただ、手を熱を、繋いで、分け合っていた。
もつゅ▽ﾓﾂ、
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作者名：花の染。 | 作成日時：2022年5月29日 14時
