消えたあとは (ページ5)

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第四話ページ5

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「佐藤は何歌うの」

いつも僕にはあまり関わろうとしない依咲が何故か話しかけてきた

『え、んと、まだ悩んでる』

「そう」

自分から聞いてきたのに何故こんなにも興味なさげなのだろうか。

まあ僕もそういうことはあるが

「おい～！！カラオケ来たんだから盛り上がろうぜ！？」

天谷はそうやって煩く喚く

まずそもそもこのメンバーを選んだ時点でこいつは盛り上がる気なんてないのではないだろうかと思うのは僕だけだろうか

『...ね、僕歌うね』

「もう決まったの？

さとー決めるの早いねぇ」

『...別にふつー』

ピッピッピッピッ

曲の名前を入れて出てきた歌を予約する。

音楽がかかると天谷も静かになる

Aメロに入る少し前にすぅ、と息を吸い声を出す。

『♪甘い世界を捕まえよう
誰も訪れたことの無い世界に
夢を見て君の世界を除く
【愛してよ】なんて図々しいね
君の世界がなくなれば君は僕の所に来てくれるのかな？なんて

誰にも解けない魔法をかけて
誰も知らない魔法の言葉で
はらりはらりと舞い落ちる
甘い匂いのお花様

愛はどこかにあって
僕の心もどこかにあって
君の世界も消えていなくて
誰も救われず過ぎていくの

この世界を愛したまま♪』

曲が終わり息をついてから後ろを振り向くと何故かみんなが僕を見ていた。

『...どうしたの』

「す、すげぇ！佐藤！お前すごい歌上手いな！！」

急に天谷が興奮気味に話しかけてくる。

それに続けて風麻も
「うん...ほんと、お世辞とかじゃなくて、すごい...」
と言った

『え、ありがと...？』

褒められるのなんて何時ぶりだろうか

もうここのところ十年は褒められていなかったかもしれない。

柄にもなく少し恥ずかしくなった。少し照れる。

それに、結構嬉しかった...かもしれない

こんな気分になったのは久しぶりだ。

「...もしかして、佐藤、照れてる？」

依咲が少し笑いながらこちらを見てくる。

『別に...照れてないし』

そう言いながらも恥ずかしくて少し顔を背ける。

「ふふ、さとーも可愛いところあるね」

可愛いとこなんて、なくていいし