#20 照史side ページ20
＊
「あ、仕事明日からなん？」
『はい、やからこれからは日によって
夜は早くない日もあるかもしれへんけど』
「ん、了解、またそれは
ボードに書いといてくれれば把握しとくわ」
『すみません、お願いします。
あ、あと明日の夜は
歓迎会をやってくれるみたいやから
ご飯作れへんけど大丈夫ですか...？』
「あ、ほんま？じゃあちょうどよかったかも。
俺、明日から東京に泊まるから、
土曜の夜まで帰らへんわ」
『あ、ほんまですか！』
「うん、土曜の夜は家におる？」
『はい、何にもないから普通に』
「そしたら2人で改めて歓迎会しよか、
何か東京で美味しいお酒買うて来るから
すき焼きでもしよ！」
『わ、いいですね！ちょっと奮発します！』
「あ、でもあかんやん、Aちゃんの歓迎会やのに
Aちゃんが奮発して買うてたらあかんやん！」
『まあ、細かいことは気にせえへんで！
とりあえずすき焼き！』
3日目にして、この馴染み具合って。
食卓には今年初めての冷やし中華と
綺麗に剥かれたグレープフルーツ。
俺の目の前のAちゃんは
『すき焼き久しぶりやー！』ってにこにこ笑う。
何か、ずっと前からこんな風に
ここにおったみたい。
それくらい、Aちゃんは
当たり前みたいにこの部屋に存在しとる。
そして、それがびっくりするくらい
俺にとっても心地よくて。
いつになるかなんて、相手が誰やなんて、
正直まだ分からんけど。
...結婚したらこんな感じなんかな、なんて。
大切な人が待っとる家に帰ってきて。
向き合ってご飯を食べて。
明日の予定を確認して。
土日のお出かけの予定を立てたりして。
子供がおったらお風呂入れてあげたりして。
テレビ見ながらゆるゆるして。
同じ部屋で寄り添って寝たりして。
ああ、そんな日が来たら、
何てしあわせなんやろう。
考えるだけでもちょっとにやにやしてまう。
『...どうかしました？』
考えとることが表情に出とったんか、
Aちゃんは首を傾げて。
「何もないで」って返すと、
『ならええです』って笑った。
...君が俺の目の前で笑うから。
やから、そんなことを想像してしまったやなんて、
君にはやっぱりまだ内緒にしとかな。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 188人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りり | 作成日時：2017年6月23日 21時
