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＊
ちょうど、3年前の春。
ジャニーズWESTのデビューと、
わたしが社会人になったのは、
ほとんど同じタイミングやった。
「この漢字で"崇裕"なんて出会ったことないのに、
芸能人におってな！
この春デビューする関西の
ジャニーズグループの子やねんて、すごない！？」
入社して最初の同期飲みの自己紹介。
そんな風に彼が笑って話しとったのを思い出す。
彼と同じ名前の"崇裕"くんがおる地元のグループ、
って、それだけでちょっと不思議な愛着があって。
あっくんのことをちゃんと知ってたのも、
実はそのことがあったからで。
...やから、こんなありえへん展開さえも。
何かの巡り合わせなんかもしれへん、
なんて思って。
普通信じられへんのに、
すんなり受け入れれたみたいなところも、ある。
『そう、です...噂の、です』
ぼそっと呟くと、あっくんは
「そっか」ってちょっと切なく微笑んで、
それ以上は聞かないでくれた。
いつか、笑って話せる日が来たら。
それまでもう少し、この話はお預け。
ごめんなさい、あっくん。
「これ、どうする？」
『...んー、写真立てから写真だけ
抜いてもらってええですか？』
「おん、ええよ」
『写真立てはまた使いますね、写真は...』
「これ取っといた方がええよ、Aちゃん」
『え...』
「...俺なんかが言うんはあれやけどさ。
もちろん辛い思い出やと思うけど、
でも、辛かっただけと違うやろ？
少なくともこの写真のAちゃん、
めっちゃしあわせそうやし。
楽しかったこともいっぱいあったんとちゃう？」
『...はい』
「今はな、こんなん手元に置いとくの
辛いと思うねん。
けど、これだけは保証する。
いつか、過去のことやって
笑える日がきっと来るから。
そん時、思い出が何も残っとらんのは寂しいやろ？
やから、俺に騙されたと思って
それまで取っとき、な？」
...あまりに優しい声に、泣きそうになった。
その声は、完全に経験者のそれで。
きっと何か、あっくんも昔辛いことがあったんや。
そして、それを乗り越えて、
笑えるようになったんやろうなあ。
あっくんの言葉は心にすうっと響いて、
わたしを自然と頷かせた。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月23日 21時
