#25 -1year past- ページ26
＊
午前の試合は、うちの学校の圧勝だった。
実は、怜央も顕嵐くんも岸くんも2年から
レギュラーで、初心者が見ても本当に上手い。
今年はそんな強いメンバーが揃ってるから、
予選で勝ち残れるかも、なんて話で。
上手いからなのか顔がかっこいいからなのかは
微妙だけど、可愛いチア部の後輩たちが噂するのも
大体その3人のことだったりして。
「顕嵐先輩、やっぱりかっこよかったね」
「えー、わたしは長妻先輩のが好き！」
「いや、岸先輩じゃない？」
「でも岸先輩は雪乃先輩にベタ惚れじゃん！」
「そんなこと言ったら、長妻先輩も顕嵐先輩も
A先輩とすっごい仲良いじゃん」
「やっぱかっこいい先輩はみんな
相手がいるんだよ、勝てっこない！」
「てか午後も勝てるといいね」
「勝ったら明日も来る？」
「え、明日塾入れちゃった！でも来たい！」
お昼ご飯を食べながら、
後輩たちの会話を同級生たちと盗み聞きする。
「勝てっこない」って、
わたしどっちとも付き合ってないけどなあ。
隣で「...だって、言われてるよ雪乃」って、
みんなに突っ込まれて照れる雪乃が可愛いから
許してあげよう。
怜央がそんな風に騒がれること、
本当はちょっとだけ嫌だけど。
だけど、みんなが知らない怜央をわたしは
たくさん知ってるもん、って言い聞かせてる。
「にしても、長妻くんって
本当Aのこと好きだよねえ」
ぼーっと怜央のことを考えてたら
そんなことを言われて、飲んでた
グレープフルーツジュースを思いっきり吹いた。
『ちょっ...何バカなこと』
「え、だってあんなのみんな分かるでしょ！
Aのために勝ちたいんだろうなって」
「本当、何か約束してたりでもするの？」
「毎回ゴール決めるたび
Aのこと見てにこにこしてさ」
「てかいつになったら付き合うの？」
2年間ずっと一緒に部活して
仲良くしてきただけあって、みんな言いたい放題。
こういうところがチア部の好きなところで、
一緒にいて楽なところでもある。
そりゃ、明日応援してほしいからあけといて、
とは言われてるし。
点数決めたらこっちみてガッツポーズしてるのも、
さすがに気づいてるけど、さ。
分かってるけど考えないようにしてたのに、
そんな風に言われてしまったら。
怜央ももしかして同じ気持ちなのかも、なんて。
ちょっとだけ、期待しちゃうじゃん。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
