#15 顕嵐side -1year past- ページ15
＊
昼間はだいぶ暑くなってるって言っても、
5月の夜はまだまだ冷える。
ブレザーを羽織っても若干寒いくらいだから、
俺の前を歩くながつと岸が
シャツ1枚なのが疑問で仕方ない。
バカは温度の感覚もおかしいのかよ。
...そろそろ、仕掛けてもいいかな。
「そういえば岸、お前最近雪乃とどうなの？」
「えっそれ聞く？聞いちゃうー！？」
「...ごめんやっぱやめようかな」
...クラスも違うしバカだしうるさいし、
何で雪乃は岸と付き合ってんだろう。
いい奴なのは認めるけどさ。
「優太くんはほっとけないの」って言ってたけど、
ほっとくべきな奴だこいつは。
だけど、今日はそんな岸を俺はほっとかない。
きっと岸が、ながつに肝心なことを聞くきっかけを
勝手に作ってくれるはずだから。
「そりゃもう、仲良くやってますよー？」
「最近会ってんの？」
「会ってる会ってる！一昨日水族館行った！」
「水族館？俺も行きたいー！」
「いいっしょー！
でも、何かカワウソに似てるって
めっちゃ笑われた！
カワウソって可愛くね？
何で笑われてんだろ俺！」
「...何かちょっと分かる気がするわ」
「分かる？まじで？
...あ、あとね、来月の試合見に来てくれるって！」
ほら、予想通り来た。
絶対岸ならこう言ってくれると思った。
1年からの付き合いをなめてもらっちゃ困る。
「来月の試合って、いつもの大会？
毎年チア部来てくれてるやつのことだよな」
「そう、サッカー部と分かれて半々らしいけど、
今年もバスケ部の応援行くからって！
Aちゃんも例年通りこっちだってよ、
よかったなながつ！」
「あったり前じゃん！
Aに応援されなきゃ俺の試合は始まんないよ！」
いつも通り、Aの話をする時は
本当にいい顔でにこにこ笑うながつ。
そうだよな、そう思ってるよな。
けどながつ、
それは口に出さなきゃ伝わらねえんだよ？
...そのことにさえ気付けないくらい
こいつはバカだから、
そんなながつが俺は好きだから、
お前の恋を応援したいから。
だから、ちょっと意地悪に、俺が教えてやんの。
「え、そうなの？
A、昨日じんに「サッカー部の応援きて」
って誘われてたよ？」
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
