#12 顕嵐side -1year past- ページ12
＊
「え、A自覚あったんだ。
ながつのこと好きって、
自分で気付いてねえのかと思ってたんだけど」
『...わたしそこまでバカじゃないんだけど』
「ごめん、ちょっと見くびってた」
怜央が好き、
そして小さい頃から怜央を守るのはわたしの役目、
だから怜央が困ったり落ち込んだりすることは
したくないし誰にもさせたくない、
だからわたしは怜央を傷付けた顕嵐くんを怒る。
部活前、俺を睨みつけながら
近くまで歩いてきたと思ったら、
Aはそんなようなことを言った。
...何せ、一気にまくし立てられたから、
詳細には覚えてないんだけど。
けど、とりあえず俺が思ってたほど
彼女は鈍感ではなかったらしい。
「...何で自覚してて告白しないの、
そんなに一緒にいるのに」
『怜央に告白とかさすがに無理。
...中学の頃にすっごい可愛かった
同級生に告白されて、
「えー嬉しい俺も好き、
○○ちゃんも好きだしこのクラスみんな好き！
てか人類みんな大好きー！」
って返した男だよ、怜央は』
「うっわ最高かよながつ」
『でしょ、最高でしょ？
怜央の"好き"は恋とか愛とかじゃなくて、
男女問わずみんなに平等なの。
...まあ側からみればバカだけど、そういう考えが
できるのって怜央のいいところだと思うし、
そんな怜央に告白したって何も変わらないもん。
だから幼馴染のまま、
怜央の1番近くにいれたらそれでいい、
今の関係壊したくないし』
窓から吹き込む風が、Aの短い黒髪を揺らす。
風になびくみたいに、
『怜央もきっと、わたしのこと幼馴染としては
好きでいてくれてるはずだから』
って、柔らかく笑って。
でも、その顔がどこか切なそうなのを
俺は見逃さない。
『...とりあえず、そういうことだから。
じんくんとは何もないし、
本当に怜央に変なこと吹き込まないで』
「分かった、ごめん。...あと、応援してる」
『...応援されてもどうしようもないけどね』
...ながつ、Aは本当にいい女だよ。
他の男に取られたら嫌なんだろ？
Aの隣は俺だけって思ってんだろ？
だったらお前もそろそろ気付けよ、
自分の気持ちに。
全然平等なんかじゃない、
それが恋とか愛とかの"好き"だよ、バーカ。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年6月7日 21時
