クロスライン 2

#56 シゲside ページ26

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「...何が楽しくてこんな、」

「ん、シゲ何か言うた？」

「何が楽しくて、

せっかくの休日に淳太とデートやねん！」

「しゃあないやん、

1人じゃこんな店入るん勇気いるもん」

「俺のが似合わへんやん、こんな店！

永坂連れてこればよかったやん」

「付き合いたての彼女をジュエリーショップ

連れてくるって、なかなかの度胸やない？

何か期待させてまいそうやし」

「...お前ほんま賢いよな」

「賢いってか、ずる賢いねん。

さすがに今日は夏希ちゃんは連れてこれへんわ」






そう言った淳太は店員さんに呼ばれて、

ちょっと待っとって、

って言い残して行ってしまった。

1人になるとなおさら、

めっちゃ居心地悪いぞ、ここ。






キャラでもないのにジュエリーショップなんかに

連れてこられたのは淳太の友達のせい。

淳太の幼い頃からの友達の1人が今海外勤務中で、

来月帰ってくることになったらしく。

で、日本で帰りをずっと待っとってくれた彼女に

プロポーズしたい、どうせなら迎えに来てくれた

空港でサプライズで、なんて言い出して。

やけど海外では買いに行けへんし保証もない、

やからネットで見た婚約指輪を

日本で買って送ってほしい、

やなんてお願いをしてきたらしい。

何と迷惑なお願いのおかげで

俺まで被害被っとるけど、

まあでもしあわせになってくださいよって感じ。






店員さんと何か相談しとる淳太は、

あの王子様っぽい見た目のおかげで

何かめっちゃ馴染んどる。

...それに比べて俺は。

ジュエリーショップやなんて、大学の時に

友達に付き合って以来入ったこともなく。

それなりに年齢を重ねとるから

こんな店に来るんも別に似合わんことも

ないんやろうけど、

慣れへんのが勝ってしまってきょどるし。






ジュエリー、なあ。

こういうジュエリーをあげるんは

男の独占欲の印や、って学生の頃聞いてから、

女の子にこういうのをあげるんは苦手やった。

独占したいって思うほど

熱を入れて誰かを好きやったことはないし、

欲しいってねだられてあげても

結局ええ思いをしたことはないし。

...そやって逃げてきたんが、

ここでも裏目に出たかな。






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