クロスライン (ページ8)

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友達以上、恋人未満。

そんなわたしらの今の関係が始まったのは、

大学3年の冬のこと。

学部が同じで、偶然隣の家に住んどって、

グループでも仲が良くて。

そんな望はわたしにとって

1年の頃から1番近くにいた存在で、

お互いにくだらない話から将来の話、

恋愛相談まで何でも話せる友達やった。

あの頃の望は、高校時代から片思いしとった

同級生とやっとの思いで付き合ったばっかりで、

すっごくしあわせそうで。

デートから帰ってくるたびに今日はどこに行って

何してん、とわたしに報告しとったくらい。

対するわたしはその少し前に、

1年以上好きやったゼミの大学院生の先輩に

めっちゃ可愛い彼女ができちゃって、

勝手に失恋して。

もうしばらく恋愛はいいや、

誰も好きになんかならへん、って思っとった。

やから、しあわせそうな恋愛をしとる望のことが

羨ましくて微笑ましくて。

...やのに、忘れられもせえへん、あの日。

「...他の男が、おってん」

『え...？』

「...俺以外にも、おってんよ。

あいつが付き合っとるの」

『...何言うとんの、望』

「...偶然見てまった、

バイト帰りに知らん男とキスしとるとこ」

電車が止まって、望はバイト先から

雪にまみれながら歩いて帰ってきて。

俺もう無理やどうしたらええの、

と言った声は震えとって。

今にも崩れそうな身体を支えようと握った手は、

びっくりするくらい冷たくて。

見たこともないくらい悲しい顔をして、

目からは涙が溢れて。

...わたしこの人を守ってあげやな、

って気持ちになったのは、生まれて初めて。

あの夜、望は泣きながら狂ったみたいに

わたしを抱いて、わたしはそれを受け入れた。

ベッドの中で泣いたまま寝ちゃった

望の綺麗な顔を、

わたしは多分一生忘れられへんと思う。

あれから、たまにこういう関係が

生まれる日はある。

お互いに彼氏彼女がおるときは絶対ないし、

おらんくても毎回なるわけやないけど。

それ以外は出会った頃から何も変わらへん、

わたしの1番の男友達。

望とは絶対これ以上の関係にはならへん、

何となくそんな気がしとる。

そんな、友達以上恋人未満な関係。

＊