クロスライン (ページ6)

今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:94,642 hit

#6 シゲside ページ6

＊

彼女と同じ部署で働き始めてから2年。

あいつは俺が経営戦略部に栄転になる1年前、

つまり入社すぐからあの優秀な人材しかおらへん

部署に配属された期待のエースやった。

...正直2年前は、女やし顔が可愛いで

何とかなってんねやろ、

なんて見くびっとったけど。

正直、橘は想像以上の女やった。

仕事はてきぱきしとって何でもソツなくこなすし

腰が低くて人当たりも良い、

お酒も飲めるから接待でも活躍するし

発想力も行動力も抜群、

その上遊んどる噂も聞かへん。

この女ほんまに何者？って思ったのが最初で、

気になり始めたらそのままずるずる

沼にハマるんも時間の問題で。

『重岡さんコーヒー飲まれます？』

「あ、うん、入れてくれるん？」

『砂糖なしミルクありですよね、...はいどうぞ』

「...覚えててくれてるんや、ありがとう」

『あ、お得意さんのを覚える癖がついちゃって、

部署の人たちのも自然と。

気にしないでください』

...こういう気配りが

さらっとできるところもポイント高くて。

いつの間にか普通にぞっこんになっとった。

あんなに遊んどった俺が、

時間も金も無駄にしか思えんくなって

女遊びはぱったりやめたし、

合コンやら街コンやら誘われれば行ってたんも

ほとんど行かんくなった。

やめてみたらそれはそれで別に

普段の生活は楽しいし何の問題もなくて、

あの頃は若気の至りやったんやって

いまは思っとる。

今の俺は正直ほんまに

彼女のことだけ大事にする自信があるし、

仕事やって今の部署でも

それなりに実績納めて認めてももらっとるし。

あいつも彼氏いてへんって言うなら、

そんな悪い物件やないと思うんやけど。

昨日は偶然やけど久しぶりに2人で

ゆっくり話す機会があったから、

それでちょっと匂わせるようなこと

言うてみたのにあの反応とか。

...ほんまに手ごわすぎる、橘A。

＊