#25 ページ25
＊
『...わ、美味しい！』
「美味いやろ？
濱ちゃんな、あんなんやけど
腕はほんまもんやねん」
『これは重岡さんが通う理由も分かります』
「いや、通っとるんは情やで。
客おらへんから俺が通ったらんと
潰れるねん、この店」
出てくるのはほんまに家庭的なメニューやけど、
どれもびっくりするぐらい味が優しくて
美味しい濱田さんの料理。
そんな美味しい料理を食べながら、
ビール片手ににこにこ笑う重岡さん。
...あかんあかん、騙されへんよ。
一体何人、わたしの周りで
あなたに泣かされた子がおると思っとんの。
どうせみんなと同じで、
わたしのことも手近やからとか
落とせそうやからとか、そんな理由...なはず。
「今年は長崎って言うてへんだ？」
『そうらしいですね、
ハウステンボスやって聞きました』
「...あんまええ思い出ないんよなあ、社員旅行」
『重岡さん、昨年とかって行ってましたっけ？』
「昨年と一昨年は運悪く
出張被ったりして行けてへんのよ。
やから営業部の時しか行ったことないねんけど、
俺がおった時の営業部の上司らが
ちょっとタチ悪くて、あんまええ思い出ないわ」
『うちの部はわりとゆるくて毎年楽しいですよ、
飲み会も無礼講やし。
そういえば昨年中間さんが
シゲも来れればよかったのにって
言っとった気がします』
「今年は行けたらええな、
行けたら淳太とは社員旅行一緒なんは初めてやわ」
『前の部署は違うんでしたっけ、中間さん』
「あいつ元々宣伝部やで、
営業部んときは照史とは一緒やったけど
淳太はうちの部になってから
初めて一緒になったんよ」
『...桐山さん、最近見ないですけど元気ですか？』
「あ、会うてへん？
元気やで、照史は元気やないと照史やないでな。
最近髪の毛切ったんやであいつ、
何やめっちゃ男っぽくなっとってビビった」
『...桐山さんの髪の毛情報は
いらないですね、うん』
「最近俺も髪切ってんけどお分かり？」
『...ごめんなさい全然気付かへんかった』
「ちょ、橘お前薄情やな！おい！」
...やから、目合わせてにこにこせんとって。
不覚にもちょっとふらっとしそうになる。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年4月17日 9時
