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タクシーから窓の外を眺める。
夜の高速道路から見える街の明かりが流れていく。
実はこの景色が昔から好きで、
何か嫌なことがあったりすると
この景色を眺めるために
車を走らせたりすることもあるくらい。
もう少ししたら高級創作和食や、と思うと
なおさら景色がきらきらしとるような気が、する？
「...なあ、橘って彼氏いてるん？」
『いたらこんな接待さらっと来れると思います？
せっかくの3連休前ですよ』
「...何で作らへんの」
『作れるもんなら作りたいんですけどね』
「...お前ならそんなんすぐ出来るやろ」
『誰がそんなこと言ってんだか、
重岡さんって意外とアホやったりします？』
1回1回のこの間は何なんやろう。
普段アホみたいによく喋るくせに。
てか何でわたしがこんなこと聞かれやなあかんの。
『...重岡さん何か企んでます？』
「え？」
『わたし一晩だけとかせがまれても
無理ですからね、いくら顔がかっこよくても
来週も会社で顔合わせなあかん人とはちょっと』
「...お前俺を何やと思ってるん」
『仕事もできるナンパ師』
「...褒め言葉と受け取っとくわ」
『いやめっちゃ貶してます』
「...何やねんもうほんまに」
いや、その台詞そっくりそのままお返しします。
この人はほんまに掴み所がなくて困る。
よく喋ると思いきや、急に静かになるし。
何を考えとるんか、さっぱり分からへん。
...でも、いやあ、悪くない。
わりと座り心地のいいタクシーの椅子の感触、
窓の外を流れる大好きな景色、
そして横を見れば黙っとれば最高のいい男。
「...俺、そこまで軽い男やないから」
『え？何ですか』
「女やったら誰でもええとか
そういうわけやないし、
誰にでも彼氏おるかどうか
確認したりなんかせえへんよ」
重岡さんずっと黙ってて、って
ちょっと思ってたら、
ふいにそんなことを言われて。
思わず隣を見ると、
綺麗で真剣な目と視線が重なる。
そうなんですか、なんて、
びっくりするほど反応に困った返事しか返せない。
射抜かれそうな視線に耐えれんくて、
窓の外に視線を向けたまま、
しばらくすると店に着いた。
...さすがに、重岡さんのさっきの言葉の意味が
分からへんほど子供やないけど。
いや、でもこの男がよりによって
わたしを気にかけとるとか、まさかね。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2017年4月17日 9時
