005 Hokuto ページ6
＊
お似合いだな、と思う。
そりゃそうだ、あいつらは同じ高校生で、
学年が2つ違うとはいえ、
学生じゃない俺から見ればそんな大差はない。
鋭い作間が何か気に障ることを言ったのか、
白石は相変わらずのしかめっ面。
美術準備室の小窓から姿だけが見える、
彼らの会話の内容は気になるけれど、
気にしないようにそっと目線を手元に戻した。
同じ空間に、同じ制服を着て、同じものを見て。
それができるのは、簡単なようで簡単じゃない。
多分、そのことに気付いているのは、
俺が同じ立場じゃないからだ。
この建物で生活をしている大多数の人間は、
それが可能なのであって、
俺はこの建物で生活をしている、
彼らとは違う少数派の立場の人間で、
だからそんなことは不可能なのであって。
立場の違う人間の人数比率がここまで極端な、
こんな特殊な状況は、
冷静に考えたらなかなか世間にあるものではない。
“教師”と“生徒”だと、括ってしまえば簡単だ。
だけど、その簡単すぎる方式でしか、
世間は俺たちを括ってはくれない。
「...所詮、俺も立場に縛られた人間だけど、さ」
振り返れば、淡いパステルカラーで描かれた、
ぼんやりした絵が何枚も並ぶ。
白石が入部してから描いた絵は、
大概がこんな淡くて儚い、抽象的な絵ばかりで。
本人が気に入って持って帰ったもの以外は、
一旦ここに保管されている...というよりは、
俺が置いておいていいって言ってる訳だけど。
好きなのは、あいつが描く絵だけだ。
...と、思いたい。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
