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作間くんが「綺麗な夕焼け」と言ったその絵は、
もうだいぶ完成に近付いてきていて。
それは、ここから離れる瞬間が近付いている証拠。
家が遠いからって早く帰る作間くんを見送った後、
こんな風に先生と過ごす時間も、
本当に残り少なくなってきたんだと思う。
...多分、わたしの青春はここにある。
この、古びた離れの美術室に、全部、全部。
「さっき白石がいない間に深澤先生が来て、
「綺麗な夕焼けだね」って褒めてたよ」
『やっぱり普通の人は夕焼けだって思いますよね、
作間くんも同じこと言ってました』
「まあ、いいんじゃん？分かる人にだけ分かれば」
『...それ言ったら、
多分先生とわたししか分かんないですよ』
わたしが参考にしている写真は、
結局ほとんど、先生が撮ったものになった。
先生のカメラの方が古いものだったけど、
独特の味が出ていてそれを気に入ったのと、
...何より、先生がシャッターを切った、
先生の目から見えた景色を、形に残したくて。
「その絵さ。最後、俺がもらってもいい？」
『え、もらってくれるんですか？』
「うん、だってこれ飾ってあったら、
見に行かなくたって朝凪が毎日見れるでしょ？
それくらい、よく描けてるよ、この絵」
...ほら、そうやってまた、優しい言葉。
ああ、もうきっと、
わたしはずっと、先生から離れられない気がする。
この絵は、わたしの恋心そのもの。
先生への想いと2人の思い出を、全部閉じ込めて。
『先生、引退しても、...また来ていいですか？』
「来ていいよ、当たり前でしょ。
薫さんも京本も、卒業したって来るんだから」
『じゃあお言葉に甘えて。
...けど、基本はいないんだから、
作間くんと仲良くしてくださいよ？』
「...待って、そうじゃん、冷静に考えて、
作間と俺2人になんのか！
うっわ、待って、それは何か気まずい」
『何で？可愛い生徒でしょ？』
「作間、やたら可愛げないもん、大人びてて。
うわー、白石がいなくなる1番の弊害そこか！」
『...もっと普通に寂しがってくださいよ、バカ』
先生、好きです。
今日も、明日も、ずっと。
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
