023 Ryuto ページ24
＊
「この色、どうやって出してんの？」
『分かんないです、何か混ぜてる...』
「色鉛筆でこんな色になんだ...！」
『42色あるから、十分使い分けできますよ』
「専門じゃないのにこんなの持ってたの？」
『わたしの絵の原点は塗り絵ですから』
「へえ...、でもこういうの、
入学してから描いたことなかったじゃん」
『最後だから、いろいろやっとこうと思って』
「ふーん、もっとやればよかったのに」
『水彩画が1番好きなのに変わりはないですもん』
今日は、また、何か、一段と先生が近いな。
物理的に、じゃなく、精神的に、というか。
最近、ふと考えることがある。
先生の気持ちが本気だということに、
どれだけの人間が気付いてるんだろう、って。
深澤先生は多分勘付いてて、
2人の関係を心配して見に来てるんだと思うし、
あと、先輩と仲の良いまりあ先輩や、
もしかして橋本くんも気付いてんのかなあ。
俺は2人の1番近くにずっといるから気付くけど、
普通、生徒が先生に憧れることがあったって、
その逆があるなんて、簡単には思わないだろうし。
でも、間違いなく、この人は本気だ。
むしろ、きっと、先輩なんかよりずっと、
先生の方が先輩のことを好きだ。
「...ま、おい、作間」
「あ、へ？」
「何ぼーっとしてんの。
お前やばいぞ、全然進んでないぞ」
「...確かにやばいっすね、」
「今完成してるの何枚？」
「...2枚？」
「2枚はやばいんじゃない？メインもまだでしょ」
先生はそんな風に急かすけど、
それどころじゃない俺の心境も考えてほしい。
いつも隣で禁断の恋が繰り広げられてて、
それを知らない顔して見てる俺みたいな高校生、
多分どこ探してもいないと思うから、
誰にも分かってはもらえないと思うけど。
＊
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
