017 Hokuto ページ18
＊
『朝の海が、好きなんです』
メインの絵にそのテーマを選んだと言ったときの、
その、白石の表情が忘れられなくて。
ああ、俺と同じか、って。
この子も、様々な表情を見せる海の、
朝を選んで1番だと思えるんだ、って。
...俺と同じことを、無意識でさらりと語る白石の、
俺は何を嫌いになれるんだろうか。
『...それ、絵にできますか？』
「ん？」
『それを、描きたいです。
...松村先生が、特別だっていう、朝凪の瞬間』
俺も、見てみたいと思う。
君の絵が写す、朝凪の瞬間を。
白石のその瞳に、朝凪の瞬間はどう映るんだろう。
俺が好きだと思うように、
同じような感動を覚えてくれるのだろうか。
それを、絵に描き残したいと、俺が言ったから、
ではなく、自分から思ってくれるほどに。
「絵にする前に、見に行こうか」
『...え？』
「朝凪の瞬間の海。見たことある？
見たことなかったら分かんないでしょ」
『ないですけど...。一緒に、ですか？』
「うん。参考資料集めだよ、
朝早くに女子高生を1人で外にやれるか」
こういえば、これは部活の一環になる。
君も断れないし、周りに説明だってできる。
...なんて、全部言い訳だって、分かってるけど。
『...いつ、ですか？』
「んー...、早い方がいいよな。今週の金曜とか？」
『...分かりました』
その、感情のないような声色は、何を思って？
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
