011 Yuto ページ12
＊
あーあ、何で振り向かせらんないんだろ。
「それは優斗のせいじゃねーな、
どう考えてもあいつのタイプの問題っしょ」
「えっ、何ではしもっちゃん...」
「だからお前、相変わらず心の声ダダ漏れな。
Aは昔から大人っぽい人が好きなんだよ、
中学の時の元カレの話もしたっしょ？」
知ってる、その話も何度も聞いたもん。
白石の中学時代の彼氏は1つ上の先輩で、
隣の男子校に進学して今は近くの私大に行ってて、
中高はバスケ部ですごいモテた人だったって。
写真も見せてもらったことあるけど、
大人っぽくて、かっこよくて背も高くて、
...そりゃ俺なんかとは全然違うタイプだけどさ！？
「ジンくんに敵う人いなかったもんなー、あの頃。
マジでモテたのあいつの元カレ、何回も言うけど」
「...つらい」
「あのジンくんが何回も口説きにきて、
根負けして付き合ったんだよ？
みんな付き合いたくても付き合えないジンくんを、
あんな扱いしてたのAだけだったもんな」
「もういいよはしもっちゃん！！
そんな俺のこと傷つけないでよヒドいって...」
...こんな落ち込んでても、白石の姿が見えたら、
無条件にテンションが上がるんだから、
人を好きになるって訳わかんねー。
今日も美術室でさくちゃんと2人でさ、
何か楽しそうに窓辺で絵描いちゃってさ。
部活だって、そんなこと分かってるし、
さくちゃんは俺の気持ちだって知ってるし、
でも「俺別に優斗くんのこと贔屓しないからね、
大昇もみずっくんも応援してる」とか言ってたな。
「...優斗もまだまだだな、敵はそこじゃないのに」
「え？」
「何でもないよ。...にしてもいい位置だな、ここ」
そうなんだ、ここはいい位置すぎるのも悪いんだ。
窓からこんなに分かりやすく離れの校舎が見えて、
しかも美術室が位置的に綺麗に抜ける訳で。
...こんなの白石のこと、
見てくれって言ってるようなもんじゃん、バーカ。
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
