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部屋にチョコレートを取りに戻って、
急ぎ足で共有リビングへ戻ろうと走る。
だって、あんな可愛い顔で微笑まれたら、
阿部くんの元に急がない訳にはいかないでしょ？
...と思ったら、思わぬ障害物があった。
『...通してくれる？渡辺くん、』
「やだ。だってAさん俺に冷たいし」
『...だから何であなたに優しくしなきゃダメなの』
この子、無駄にかっこいいのが厄介だ。
よくモテそうな、こなれた感じが癪に触る。
「ねえAさん、」
『…だから何？』
「俺もルームメイトになったらさ、」
『え？』
「阿部ちゃんみたいにルームメイトになったら、
俺もAさんに優しくしてもらえんの？」
とろんとした目で、そんなことを口走る。
ちょっとずつ、近付く距離。
…それで誰でも落とせると思ったら大間違いだ。
『優しくするのは阿部くんがいい子だからよ。
渡辺くんがルームメイトになっても、
君次第で優しくなんかしない』
「…何でよ、」
『何でも何もないでしょ。
初対面でそれはまあ馴れ馴れしく、
酔った勢いで口説いてくる男になんて、
わたしは優しくする気はありません』
言い切ると、むすっとした顔をする。
多分こんな表情も、可愛いとか言って許される、
渡辺くんみたいな子はきっと存在自体が罪だ。
「じゃあ分かった」
パンッ、といい音で手を1回叩いて。
いきなり目の前にすり寄って、
ぎりぎり目の合う至近距離でわたしを覗き込んで。
「俺、今日からここ住むわ。
そんでちゃんとしてるとこAさんに見せる」
『は…、』
「そんで正々堂々口説くけど、それはいいよね？」
『何言って、』
「端の部屋、空いてるって聞いたよ？
俺、決めたら早いから。今週中には引っ越すよ」
そう言って、わたしの髪をさらりと撫でる。
思わず目を見開いて訴えてみるけど、
…どうやら冗談ではなく、彼は本気らしい。
「そうと決まったら阿部ちゃんに言おうっと」
なんて、能天気に口笛を吹いて廊下を出ていく。
パタン、と扉の閉まる音がして、
その風が廊下にふわっと寒さを運んできた。
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りり(プロフ) - みやちゃさん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて光栄です。阿部くんメインのお話、実は書いてみたいものがあったりします...落ち着いたら更新したいと思っているので、そのときまでお待ちください！今後もお付き合い頂けたら嬉しいです！ (2018年12月24日 21時) (
レス) id: 6193b7c26e (このIDを非表示/違反報告)
みやちゃ(プロフ) - コメント失礼します。りりさんが書くお話がとても好きなので、是非阿部亮平くんメインの長編のお話も待ってます…（´-`）.｡oO (2018年12月24日 17時) (レス) id: 0916b99464 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りり | 作成日時：2018年11月30日 0時
