＊ ページ13
＊
「...画面の中みたいには上手くいかないか、」
モテるってよく聞く、社内でも人気の彼なのに。
そう呟いて髪をくしゃくしゃっと触って、
「ごめん、今のなかったことにして」って。
席を立ったと思ったら、また機械の音。
テープを取り出す彼は最初と違って無言で、
しかも多分、ちょっとだけ手こずっている。
...可愛い、阿部さんもこんなところあるんだ。
そっと椅子を離れて、阿部さんに近付いて、
...ぎゅっと後ろから抱きついた。
「え、ちょっ...Aちゃん、」
『なかったことにはできません』
「え、いや、」
『上手くいかなかったんなら、...もう1回、』
「もう、1回、」
『やり直して？...わたしもしたいです、キス』
さっき見たPVみたいに、
そんなきらきらしたばかりのものじゃないけど、
...でも、今、始まってしまったから。
...引き金を引いたのは、阿部さんだもん。
「...冗談って言っても、もう聞かないよ？」
『冗談でこんなことする人じゃないって、
それくらいは阿部さんのこと知ってるつもりです』
「...その言葉、なかったことにはしないから」
『お互い様ですね、？』
試写室のオレンジの中、彼のキスがわたしに降る。
そっと、ちょっとだけぎこちなく、
繋がれた指先があったかくて愛おしい。
一瞬離れて目が合ったら、...照れて微笑まれて。
...2人きり、幾度も響くキスの音。
それはきっとさっきの映像みたいに、
どこにでもありそうで、でもどこにもなさそうな、
...わたしと阿部さんだけの、恋の物語の始まり。
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 238人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りり(プロフ) - みやちゃさん» コメントありがとうございます！そんな風に言って頂けて光栄です。阿部くんメインのお話、実は書いてみたいものがあったりします...落ち着いたら更新したいと思っているので、そのときまでお待ちください！今後もお付き合い頂けたら嬉しいです！ (2018年12月24日 21時) (
レス) id: 6193b7c26e (このIDを非表示/違反報告)
みやちゃ(プロフ) - コメント失礼します。りりさんが書くお話がとても好きなので、是非阿部亮平くんメインの長編のお話も待ってます…（´-`）.｡oO (2018年12月24日 17時) (レス) id: 0916b99464 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りり | 作成日時：2018年11月30日 0時
