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「ありがとうございました、本」
「もう読み終わったの?」
「面白くて一晩で読み切っちゃいました」
Aさんが借りてきてくれた本は
渡された次の日にはAさんに返した
最終的には泣きそうになるくらい感動して
とてもいい本だった
「そういえばジョングクくん、兎に似てるよね」
「いきなりですね」
「思い出しちゃって」
どういう思考回路で
俺が兎に似ていることを思い出したのかは分からないけど
確かに、兎に似ているとは言われながら育ってきた
「…待ってください、俺のことを見たことあるんですか?」
今までカーテン越ししか会話したことがなかったから
Aさんは俺の姿を知らないと思っていた
「この前図書室に行った時、すれ違ったの。その時に看護師さんに教えて貰ったの。」
「言ってくれれば良かったじゃないですか」
「私は駄目。(笑)」
なんか、恥ずかしいじゃんか。
そうは思いつつも、あの日すれ違った人を思い出すけど、
そんなことを考えながら歩いていないから
特には何も覚えていない。
でも、Aさんが頑なに自分の姿を俺に見せないのは
どうしてなんだろう______?
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作者名:21 | 作成日時:2023年5月3日 12時