光と影【野坂悠馬】 (ページ7)

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神崎｢いっくよー！｣

｢A、ナイスシュート！｣

｢くっそー、次こそ止める！｣

最初はよかった

みんな楽しそうにプレーしてて

私自身、とても楽しかった

それがいつの間にか

変わっていってしまった

｢いいよな、Aは｣

｢可愛いってだけでスタメン入りだもんな｣

神崎｢そんなんじゃ…｣

｢また監督に媚び売ってんのかー？｣

私は努力した

誰よりも上手くサッカーができるように

でも上手くなると

今度は私の実力を

誰も認めてくれなくなった

監督に媚を売ってスタメン入りした

可愛い顔してれば

サッカーができなくてもグラウンドに立てる

変な言いがかりをされて

私は居場所を失った

｢あんたってさ

男に好かれたいからサッカーしてるんでしょ？｣

神崎｢違うよ｣

｢違わないよ

だって男とベタベタしてるじゃん｣

神崎｢してない｣

｢嘘つかないで！｣

神崎｢いった…｣

｢帰れ、もう二度と来んな｣

｢お前のせいで

俺たちは試合にも出られないんだ｣

｢顔が良いだけの媚び売り女！｣

神崎｢痛いっ私…そんなことしてないのに｣

私のこと蔑むような

たくさんの目

いつの間にか私は

人の目が怖くなった

小学6年生になり

サッカーをやめた

女の子からの嫌がらせはなくなり

平和に過ごせると思っていた

｢好きです、俺と付き合ってください｣

学年で1番イケメンだと言われる子に

告白された

正直とても嬉しくて

何も考えずに付き合った

でも、恋人らしいことは

何一つしていない

そもそも

私は目すら合わせたことがない

忘れ物を取りに

教室に向かったある日の放課後

｢お前さ、神崎のどこが好きなの｣

｢そりゃ顔だろ｣

｢まあそれ以外取り柄ねーもんな

暗いし｣

｢あんな美人、ほっとくにはもったいないって

彼女にしとけば俺の株も上がるだろ？｣

｢お前ほんと最低なやつー｣

｢そんなもんだろみんな｣

｢そうだそうだ

あんなやつ、顔以外

好きになったことなんてねーよ｣

所詮顔か

顔が良ければ都合よく使われる

顔が良ければあらぬ噂を流される

でも

顔が良くないと世間では相手にされない

顔が良くないとグループから排除される

所詮すべては顔

誰も

その人の中身や

その人自身なんて大して見ていない

外見で全てを判断する

私はこんな世の中

大っ嫌いだ