空っぽな僕を1%だけ埋める 巡礼の旅

燃えたらおしまい ページ32

犯人はあっさりと捕まり、解決した。

一方で、Aは重症で目が覚めたものの入院中だ。

目が覚めた時、油断しちゃった、と笑って誤魔化そうとするAがどうしようもなく愛おしくなってしまった。

俺のリスナーだっだから、気持ちがわからないわけじゃなかったんだろう。

だから、恐怖心も全て笑って誤魔化そうとした。

「守れなくてごめん」

そう言ったら、泣き出してしまったA。

怖かった、さとみくんに会えなくなると思った。

そう言ってしがみついて泣いたAは、今も尚家に帰りたいと言う。

病院に一人でいるのが怖いと嘆く。

家に帰ったら何をしようか。

「A」

「さとみくん！」

そう言って笑ったAの傍には浦島坂田船のメンバーところんとるぅとだった。

なんとも愛された子だなぁなんて思ってしまう。

「おぉ、はじめましてやな、さとみくん」

「志麻さんですよね、はじめまして」

「爽やか好青年って感じするなぁ」

「間違いなく坂田よりは好青年やろ」

「なんやと！！」

ギャーギャー騒がしくなる病院の室内に、俺は苦笑いをしながら、Aの隣に座る。

明日、退院する。

志麻さんや坂田さんからコラボしようと誘われて、Aは嬉しそうにした。

「はよ、おうちに帰りたいなぁ」

「明日には帰れるよ、帰ったら何しようか？」

「甘やかして…ぎゅってしたい」

「…っ、かわいいなぁもうほんと」

そう言ってハグをした。

翌日、退院したあともちろん言われたとおりに甘やかして甘やかして。

一日中一緒にいた。








さとみくんと付き合って、嫌なこともあったし、嬉しかったことも沢山あった。

あの日、刺された日から2年がたった。

さとみくんと私はリスナーからさとAとタグを作って貰って人気まで出た。

あれからリスナーさんがなにかしてくることは無かった。

のちのちるぅくんに聞いたら、次私に何かあったら活動を辞めると宣言したらしい。

もちろんその話はジェルくんもしてて、すとぷりみんなが決めたことだった。

申し訳ないような、嬉しいような気持ちだった。

指についてる指輪を見ながら、ソファーにいると後ろからハグされる。

「何ぼーっとしてるの？」

「…幸せやなぁって」

「俺もだよ」


そう言ってさとみくんはキスをする。

私は沢山の幸せをこの人からもらったから。

私はこの人のことを世界一幸せにしたい。






推しに愛された私は世界一幸せなリスナー。








end

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