検索窓
今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:16,663 hit

舌で転がす7度8分の微熱 ページ20

腹に回っていた腕が離れたかと思ったら、ぐいっと体が反転させられた。

両手が頬に触れる感触にとっさに目をぎゅっと瞑った。

自分が何の衝撃に備えようとしたのかはわからないが、

少なくとも目を合わせることはできなかった。

こつん、と額がさとみくんの額とぶつかる。







「もっと頼ってよ」






さとみくんの低い声でそう言われた。

頼り方なんて知らない。

分からない。

どうしたら、頼っていいのかなんて私にはわからない。

それでもさとみくんは、目をそらさずにいう。

「…っ」

「話して、ね?俺は君の味方だから」

「ずるい、なぁ…」

ジェルくんと同じことを言うんだこの人は。

私には死んだ兄がいた。

その兄は誰よりも病弱で、誰よりも優しい人だった。

そんな兄はいつでも私に構ってくれた。

あつ兄はある日突然姿を消した。

学校から帰ったらあつ兄は居なくて、母からは

【おまえのせいだ】

【お前が家を空けたから】

【お前がいたから亜月は死んだ】

そう言われた。

あつ兄の葬式にも出させて貰えず、私はただ納屋で過ごした。

その日からだった。

ご飯を貰えなかったり、お風呂に入れて貰えなかったり。

あつ兄がいたからこそのご飯だったことにそこで初めて気がついた。

そして次男の絢斗はあつ兄が気に入らなかった。

あつ兄がお母さんに可愛がられていたから。

その腹いせに私に暴力を振るうようになった。

お母さんも姉も父も止めなかった。

背中には無理やり押し付けられたアイロンの跡だってある。

「……俺が、俺達がなんとかするから、ここにいてよ」

話を終えたさとみくんは手を震わせてそう言った。

怒ってる。

何日もいたらわかるし、何より推しだから分かる。

さとみくんが怒ってる。

その姿がやはりあつ兄に被る。

「俺はそんな所にAちゃんを返す気は毛頭ない」

「でも」

「でももだってもなし、俺が、決めたことだから」

「……さとみくん……」

「なんてったってジェルの妹だしな」

その言葉で認めたくない感情を認めざる得なくなった。

嫌だと思ってしまった。

夢小説とかならきっとここで告白まがいなことを言われるんだろうけど、現実は違う。

私はこの人が、




さとみくんのことが好きなんだ。




認めた瞬間、顔に熱が集まる。

早っと赤くなる顔に怪訝そうな顔のさとみくん。

あぁ、ただのリスナーが彼女になんてなれるはずもない。

また自分の首を絞めるのか私は。





脳みそに鮮やかなジェラートを→←辛めのシュガードーナツ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
48人がお気に入り
設定タグ:さとみ , すとぷり   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

はちみつ(プロフ) - はのさん» 2度もコメントありがとうございます。どちらも読ませていただいておりました!特にこう言う界隈は他界隈への影響も大きので少しでもリスナーの意識が変わったらなーと思いつつ書きました。素敵な作品と言ってくださり、ありがとうございました! (2020年2月3日 2時) (レス) id: fdd37857b4 (このIDを非表示/違反報告)
はの - 二度目のコメント失礼します。完結おめでとうございます!更新お疲れ様でした!!こういうことがありえそうなのが怖いですよね…特にこの界隈は年齢層が低いのでそれも踏まえて、ですよね…考えさせられる素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみです。 (2020年1月27日 1時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
はの - お話の題名が素敵すぎます…!内容も面白いし現実的で凄く素敵です!こんな素晴らしい作品なのに素敵としか言えない自分の語彙力を恨みます…作者さんのペースで頑張ってください!応援しております!! (2019年9月16日 4時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年8月5日 3時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。