いくつもの嘘から見つけた本当 ページ15
兄とは呼びたくない。
それでも兄であることは変わらないアイツは突然やってきた。
三日前、大阪へ帰ってこいと無理やりに帰らせようとする理由は簡単だった。
家の事で手が回らなくなった兄は私を使えばいいと判断した。
私がジェルくんとおなじでネットで活動していることをどこからか聞きつけたらしい。
無理やり引っ張られて駅まで連れてこられて、抵抗していても進んでしまう。
いやだ、帰りたくない。
次の瞬間、兄の手は私から離れていて、安心できるような温もりが私を包んだ。
「なんだ、おまえ」
兄が低い声でそう言った。
「Aちゃんの友人ですけど」
安心する、落ち着くこの声は私がずっとずっと好きな声。
さとみくんだ。
さとみくんと兄が何か言ってるうちに、ジェルくんまで来てくれた。
ジェルくんを見て、兄は一目散だった。
安心したのかさとみくんに支えられたまま崩れ落ちた。
ジェルくんのおんぶで、1番家が近いさとみくんの家へ行く。
ソファに座って、ジェルくんは心配そうに見ていて、さとみくんは気を使ってくれたのか飲み物を取りに行った。
「大丈夫か?」
「う、ん」
「来た理由はなんやったの?」
「家の事やれって、ネットの活動なら大阪でもできるやろって…」
「…そうなんやな、さとちゃんに話すん?」
「…」
巻き込んでしまった以上説明はすべきだと分かっている。
さとみくんの方を見たら、
「言いたくないなら、言わなくていいよ」
と笑って言ってくれた。
この人のこういうところが好きだ。
言わなきゃ、ジェルくんが頑張れ、と背中を押す。
ジェルくんは席外すから、と別の部屋に行った。
「あの、ありがとうございました、助けてくれて」
「気にしなくていいよ」
「…私の親、ネグレクト、っていうんですかね。父も母も兄も姉も私なんて召使いとしか見てないんです」
「でも、前会った時俺の事兄貴に似てるって言ってなかった?」
「…死んじゃった長男です」
「え?」
そう、あいつは次男で私の唯一の味方は歳の離れた長男だけだった。
どこにも連れてって貰えない私といてくれたのは、体の弱かった兄だった。
優しくて、芯のしっかりした兄だった。
兄がいなくなった、死んだのは、私が中学生になった時だった。
そこから次男はやりたい放題になってしまった。
「だから、逃げたくて出てきたのに…」
「…家バレてるんだっけ?」
「…?はい」
「なら、オレが匿おうか?」
問題発言だ。
☆
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はちみつ(プロフ) - はのさん» 2度もコメントありがとうございます。どちらも読ませていただいておりました!特にこう言う界隈は他界隈への影響も大きので少しでもリスナーの意識が変わったらなーと思いつつ書きました。素敵な作品と言ってくださり、ありがとうございました! (2020年2月3日 2時) (レス) id: fdd37857b4 (このIDを非表示/違反報告)
はの - 二度目のコメント失礼します。完結おめでとうございます!更新お疲れ様でした!!こういうことがありえそうなのが怖いですよね…特にこの界隈は年齢層が低いのでそれも踏まえて、ですよね…考えさせられる素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみです。 (2020年1月27日 1時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
はの - お話の題名が素敵すぎます…!内容も面白いし現実的で凄く素敵です!こんな素晴らしい作品なのに素敵としか言えない自分の語彙力を恨みます…作者さんのペースで頑張ってください!応援しております!! (2019年9月16日 4時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舘 | 作成日時:2019年8月5日 3時