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空っぽな僕を1%だけ埋める巡礼の旅 ページ11

あの生放送から2ヶ月。

私達は本当に会うことはなかった。

さとみくんから何度も何度も連絡は来ていたけど、やっぱりリスナーとしていたい。

さとみくんの声は私は毎日聞いてる。

コラボの動画は私の意向で非公開にしてもらったけど、作ってもらった動画はもらってる。

何度見てもやっぱりさとみくんは優しかった。

会いたいし、またゲームだってやりたい。

でも、それはリスナーの人は嫌がるのは分かってる。

分かってる。

忘れろ、いい夢だったと思って忘れなきゃ。

そう思っていたら家のインターホンが鳴った。

モニターで見たらへにゃりと笑ったジェルくんだ。

ジェルくんを部屋に入れると、お邪魔しますと言いながら頭を撫で回した。

「Aが寂しいかと思ってきてもうた」

「寂しくないよ」

「俺にまで嘘つかんでもええやろ」

ポンポンと頭を撫でたかと思ったら、両手を広げるジェルくん。

もう何年もジェルくんのこれに甘やかされてる。

ジェルくんは分かってるんだ。

私がどう思ってるのか、何を考えてるのかわかり切ってるんだ。

「ほら、A〜こっち来ぃや」

「ジェルくん…」

言われるがまま、ジェルくんの腕の中に収まる。

背中をポンポン叩くと我慢していた涙が溢れた。

あぁ、ずるい。

本当に私の兄は彼しかいないと思う。

「どーしたん、俺に話してみぃや」

「…っ」

「さとちゃんとのことやろ?」

頷くと、やっぱりなぁと笑った。

会いたい、それはやっぱり友人として会いたいわけではない。

やっぱり推しだったから、いろんな面を見たあの日からずっとガチ恋なのだ。

「会えばええやん」

「…さとみくんのリスナーを傷付けたくない」

「さとちゃんがガツンと言うてやん」

「納得出来ることでもないと思う」

「ほんまに、Aは優しいなぁ…」

私にはリスナーの気持ちが分かる。

何よりそれは私が辛かった時期さとみくんの生放送で元気をもらったからだ。

さとみくんは語りって言って冗談じみて色々言うけど、私にはそれは心強い言葉でもあった。

それをジェルくんも分かってる。

「誰も傷つかんのは無理やろ」

「…ん」

「ええやん、もう沢山傷付いたやろ」

「…やだ」

「さとちゃん、心配しとるで」

沢山の人を傷付けてまでさとみくんに会いたいとは思えない。

リスナーが傷つくということはさとみくんだって嫌なはずなんだ。

「さとちゃんはAが傷つく方が嫌なんやって」

みんなみんな優しいのだ。







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設定タグ:さとみ , すとぷり   
作品ジャンル:恋愛
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はちみつ(プロフ) - はのさん» 2度もコメントありがとうございます。どちらも読ませていただいておりました!特にこう言う界隈は他界隈への影響も大きので少しでもリスナーの意識が変わったらなーと思いつつ書きました。素敵な作品と言ってくださり、ありがとうございました! (2020年2月3日 2時) (レス) id: fdd37857b4 (このIDを非表示/違反報告)
はの - 二度目のコメント失礼します。完結おめでとうございます!更新お疲れ様でした!!こういうことがありえそうなのが怖いですよね…特にこの界隈は年齢層が低いのでそれも踏まえて、ですよね…考えさせられる素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみです。 (2020年1月27日 1時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)
はの - お話の題名が素敵すぎます…!内容も面白いし現実的で凄く素敵です!こんな素晴らしい作品なのに素敵としか言えない自分の語彙力を恨みます…作者さんのペースで頑張ってください!応援しております!! (2019年9月16日 4時) (レス) id: d7c684c614 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月5日 3時

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