82話 ページ2
中也「なあ旦那。何で俺が手を使わずに戦ってたか、教えてやろうか?」
中也は敵へと歩き出しながら言った
その足下で、無数の小石が震え、浮き上がる
中也「俺は喧嘩で負けたことがねえ。ヤバいかもと思ったこともねえ……当然だ。俺は人間じゃねえんだからな。俺という人格は、あんたが言うところの”安全装置”……溶鉱炉みてえな巨大な力の塊、その辺縁にへばりついてる模様に過ぎねえ。なぁ……そいつがどんな気分か、あんたに分かるか?」
『(模様にすぎない、か)……』
中也が何も無い空中に足を踏み出した
空中の微かな塵を捉え、中也の足が虚空を踏む
もう一方の足で次の虚空を踏む
そのようにして、見えない階段を上るように、中也は蘭堂へ向かって歩いていく
中也「だから両手を封じた。そうすりゃいつか負けそうになる時がくる。戦いを楽しむんじゃなく、必死に自分を護れる時がくる……そうすりゃ、ちっとは愛着が湧くかと思ったんだ。模様に過ぎねえ俺を、この体の主人じゃねえ俺って人間をな」
中也が空中を蹴って跳んだ
紅き夜を裂く猛禽となって中也が飛翔する
その真正面から、空間波が波濤となって立ちはだかる
建物の壁を砂糖菓子のように砕く威力を持つ空間波を──中也は避けず、真正面から突っ込んだ
蘭堂「何っ!」
中也「うおらァァァッ!」
『中也!』
衣服や肉の裂ける音を響かせながら、中也が空間を抜けた
全身に裂傷が走り、無数に出血しているが、その速度は衰えていない
蘭堂「自らの衣服と肌を高重力化して密度を増し、衝撃を受けきったのか……!」
出血が尾をひいて後方に流れ、全身の骨が悲鳴をあげる
だが中也の口元には凄絶な笑み
横向きの重力でさらに己を加速させ、生きた砲弾となって蘭堂へと殺到する中也
飛翔する殺意となった中也を止める壁は存在しない
空間波の壁は間に合わない
先代による身代わり防御も間に合わない
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neko - 中也、一端夏目漱石さんと代わるよ。終わったらズッと君だよ。愛してるね。可愛い中也さん。 (2020年10月19日 13時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
リザ - とても良い作品です!更新楽しみです! (2020年7月12日 21時) (レス) id: 957f187fe2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリウ | 作成日時:2020年7月6日 15時