80話 ページ50
太宰の拳が蘭堂へと叩きつけられる
──その直前
”世界が吹き飛んだ”
太宰「なっ」
深紅の輝きが世界を覆い尽くした
建物が消滅し、地面が消滅し、重力と引力が消滅した
世界のありとあらゆるものが消滅し、引き裂かれ、破片と化した
蘭堂「知っているはず……私は亜空間を操る異能者だと」
空中で声がした
深紅の世界の中で、人間ならざる”それ”が言った
蘭堂「空間を操るとはすなわち、それが内包する万物を操るということ……太宰君、君がいかに私の天敵であろと、その拳が私に至るまでの空間を操られれば、万年かかろうと届かぬぞ」
蘭堂が空中に浮いていた
外衣をはためかせ、周囲に無数の瓦礫を浮かばせながら
中也「おいおい……マジかよ」
中也がそれを見あげて言った
中也「反則だろ、こんな規模の異能……」
太宰も唖然として周囲を見渡していた
太宰「これだけ空間を自在に操れるなら、マフィアの金庫室に入るくらい楽勝だったろうね」
『はぁ、馬鹿みたいな規模の異能だ。もう異能と呼べるのかすら怪しい』
亜空間の結界の内部は、もはや地上のどんな風景とも似ていなかった
地面は抉れ、建物は破砕され、あらゆるものが深紅の大気の中に浮かんでいる
蘭堂「中也君、憶えているか?かつてこの空間に君は来たことがある」
外衣をはためかせながら、空中の蘭堂が言った
蘭堂「八年前のあの日……私は相棒である諜報員と共に、この地へ潜入していた。目的はこの国で発見されたという、《この世ならざるもの》を発見し、奪取すること。私と相棒はその謎の生命体が、軍の秘密施設に封印されている事実を掴んだ……だが施設で君を奪取し、脱出しようとした時、”何か”が起きた。善くない何か。それが何であったかは未だに思い出せぬ……覚えているのは、その何かのせいで敵に発見されて追い詰められ、アラハバキを異能として取り込まざるを得なくなったことだけだ」
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作者名:エリウ | 作成日時:2020年6月20日 22時