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72話 ページ42

蘭堂「素晴らしい戦闘の才……だが、逃げてばかりではいずれ追い詰められるぞ、少年少女」

下方向に回避した中也に、上方向に回避したAに、更に空間波が襲いかかる

亜空間にいる限り、攻撃から逃れる術はない

質量を持たない空間そのものによる攻撃のため、重力と引力で逸らすことも出来ない

まさに中也とAの天敵と言える能力だった

だが

中也「忘れっぽいんじゃねえか、オッサン」

衝撃波が中也に殺到し──直前で雲散霧消した

中也が盾をかかげて、衝撃波を防いだのだ

太宰「ちょっと、服引っ張らないでくれる?襟のとこが痛い!」

盾が喋った

蘭堂「太宰君……か」

中也「こいつは異能を無効化させる」

中也が太宰を掴んだまま言った

太宰「ちょっとA!中也に何吹き込んだんだい!」

『見ての通りだよ、危なっ!中也と僕じゃそれを防げないから、せめて太宰には中也の盾になってもらうって話したんだよ』

Aは攻撃を避けながら言う

太宰「Aはどうするの?」

『僕は暫く持つ、太宰は何か作戦でも考えろ』

中也「こいつ自身に触れねぇように亜空間を展開することは出来ても、攻撃を届かせる事は出来ねえ。欧州の異能諜報員が聞いて呆れるぜ。こんな奴の無効化も突破出来ねえなんてな」

蘭堂「うむ……その通りである。私の目から見ても、太宰君の存在は異端……欧州にすら存在せぬ、究極の反異能者。しかし──」

蘭堂が手を掲げた

太宰「中也君!僕を思い切り後ろに引け!」

『太宰!』

太宰が叫び、Aが太宰を庇ったのと、銀の閃光が奔るのがほぼ同時だった

空間が切断された

銀色の一閃が、一瞬前まで太宰の首があった部分

そして太宰を庇ったAの背中があった部分を両断していた

鎌の先端が太宰とAの服、皮膚、筋肉の一部を引っ掻き、血の飛沫を纏って通り抜ける

太宰「ぐあ……っ」

Aが庇った事で致命傷は免れた太宰だが、深い一閃の跡が残った

『背中、痛ってぇ〜……ははっ』

太宰「A、済まない……笑ってるけど、大丈夫なのかい?」

『はははっ、いや〜……これは、ちときついね。正直、ぶっ倒れそうだ……っ!』

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作者名:エリウ | 作成日時:2020年6月20日 22時

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