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57話 ページ27

太宰「その飾り付けは右の天井近くにお願い。そう、もうちょっと上にね」

『綺麗に出来たら達成感あるしね〜、こういう飾り付け好きだよ』

とある部屋で、太宰とAが宴の準備をしていた

造船所の建物内にある応接室だ

倒産して所有者が不在となった造船所跡地は、非合法組織にとって格好の住処になる

船を補修する為のドックは今は広い空き地となっており、その両側に立つ三階建ての建物は、静かに滅びゆく運命を受け入れていた

その建物内にある一室、応接室に、太宰とA、そして蘭堂はいた

かつては高級絵画と沈み込む様な椅子が置かれていたであろうその部屋は、今は雨漏りの染みと割れた硝子の破片が彩る廃屋となっていた

そして太宰とAは、どんな改造をしてもだれも文句をつけてこないこの部屋を、彼の望みの部屋に変える真っ最中だった

太宰「はぁ、楽しみだなぁ。中也君が自由を得た記念に、こんな盛大なパーティを催して貰ったと知ったら、彼はどれくらい喜ぶだろうか」

『泣いて喜んでくれるといいなぁ、人の泣き顔って最高だもん。強いて言うなら、絶望した時の顔とか特に』

太宰とAは上機嫌に鼻歌を歌いながら、壁に飾り布を留めている

太宰は左手はギプスで固められている状態だが、右手だけで色とりどりの装飾を次々飾り付けていく

太宰「おお、この飾り紐、ながーい。奮発して用意しただけあるなぁ。部屋の壁を全部飾りで埋め尽くせそうだ。ほら蘭堂さん、端持って。これだけ豪華な飾り付けなら、Aの言う通り中也君は感動して涙を流すね」

部屋には深紅の上等な絨毯が敷かれ、音響装置からは少年達が好みそうな陽気な現代音楽が流れている

部屋の奥には金装飾の配膳台があり、その上には二十人を満腹に出来そうなほどの巨大ホールケーキが載っていた

部屋の照明は暗く抑えられ、数秒おきに切り替わる鮮やかな色彩照明が、部屋を深海や黄昏や新緑の中のように見せていた

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作者名:エリウ | 作成日時:2020年6月20日 22時

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