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134 ー春蘭sideー ページ41

―春蘭side―


真っ白に染められた着物には、

青い清涼感が漂う花の刺繍があしらわれている。



Aの瞳の色に似ているのだから、

間違えない。



そう確信した私は、

再び彼女が待つ中庭へ走った。




灯りのない廊下を走りながら

思ったことがある。


「今なら誰かの役に立てるのかもしれない」

ということだ。



屋敷に生まれ、母を亡くし、

私は誰かの役に立つという経験を

したことがなかった。



だからこそ煉獄家で

殿方に奉仕するAを見て

少し憧れていたのかもしれない。



Aのいるこの屋敷では

私なんて必要ないのではないか。



本当は心の奥で

そう思っていたのだ。



……でも今は違う。


私は手にある白い着物を

強く握りしめた。



Aの青い瞳にあてられた時、

気がついたのだ。




今なら誰かの役に立てるかもしれない、と。


Aの役に立てるかもしれない、と。





だから今、こんなにも高揚とした気分である。




もうすぐ中庭に出る。

長い廊下マラソンの中、そう確信した時だった。



春「きゃっ」



大きな何かとぶつかり、転倒する。


慌ててその身を起こすと

すぐに何とぶつかったのかが分かった。





槇「…鬼が出たか」



その声に、私はもう一度白い着物を

自分の胸に抱き寄せた。



春「きょっ、杏寿郎様と、Aさんは

 そこの中庭に居られます」


私は立ち上がり、

槇寿郎をすり抜けて中庭へと向かった。






春「わっ」


中庭に出ると、辺りは戦場の景色となっていた。


目の前を火花が飛び散る。




杏寿郎やAは無事なのだろうか。




煙の中、

一歩ずつ足を動かす。


A「春蘭」


春「っ!」


突然腕を掴まれるので、

私は思わず息を殺した。


しかし、その声の主がAだと理解すると

胸を撫で下ろす。



A「よく持ってきてくれました。

  怪我はない…?」



一通り私の安否を確認してから、

傷だらけの彼女は

着物を受け取った。



胸周りにさらしを、

そして腰にバスタオルを巻いただけの

彼女は、いつもに増して頼もしく見えた。



いつもは作業着に隠れて見えないが、

鍛え上げられた体であった。

135 ー春蘭sideー→←133 ー春蘭sideー



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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