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133 ー春蘭sideー ページ40

―春蘭side―


深夜。


眠れず一人で愛読本を眺めている最中、

異変は起こったのだった。


もうすっかり夜が更けているのに関わらず、

中庭の方からAの叫び声を

聞いた気がしたのだ。



あの声は確か

桜の木のあたり。


そう思った私は愛読書を枕元に置き、

そのまま中庭へと向かったのが

運の尽きだった。


何だ、あの化け物。


どうして杏寿郎の辺りから

火が噴き出しているんだ。


火事なのか。


そしてAの足に巻いている

武器は何だ。



私の目の前で

一体何が起こっているんだ。


一段と早く動く心臓は

私の呼吸のペースを上げていく。



逃げなければ。


A「春蘭!!!」


聞き慣れたその声が

桜の木の上から降ってくるので

私は迷わずにそちらへ目をやる。



春「はい!」


その私の返事は

もはや脊髄反射であった。



A「私の部屋の箪笥から、

  白色の着物を

  今すぐ取ってきなさい」



いつも見てきたAの右目。


その隣に並ぶ左目は、

今この瞬間初めて見た。


杏寿郎の方から来る爆風に、

その前髪が浮いたから

見えたのだった。



青い。

Aの左目は、青かった。



春「はい」


私は木の上からこちらを見つめるAに

そう返事をし、

彼女の部屋へと一目散に駆け出した。



汗ばんだ裸足で

渡り廊下を滑り込むように走る。


物音への配慮など、

今は気にしていられる状況ではなかった。


暗闇の中ようやく顔を出したAの部屋。

その襖を迷うことなく開けた。



ストンと2枚に重なる襖。

部屋からは、桜の匂いがした。


奥に設置された箪笥を開けると、

そこには整頓された着物たちが眠っていた。



白の着物。

白の着物。


思わず口に出しそうになりながら、

私は数え切れないほどの着物を漁った。



Aがいつも着用している

作業着とは似ても似つかない豪華な着物。


それらがどうして

こんなに沢山ここに収納されているのだろうか。


この時の私には、

そんな不可思議な疑問を考えられる余裕はなかった。



春「あった!」


シルクの手触りを引っ張り上げた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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