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125 ー春蘭sideー ページ32

―春蘭side―


『もうAさんは怒っていませんよ』



という千寿郎の言葉を信じ、

杏寿郎とAの声が聞こえた奥の部屋へと

寝巻きのまま向かっていた。



まずは謝ろう。


杏寿郎の額に傷をつけてしまったこと。



そして、これからは気をつけると

Aに伝えよう。



一体どうすれば、

許してもらえるのか。


私の頭の中は、それだけで一杯だった。


奥の部屋の前まで来た時、

二人の笑い声がぴたりと止まったので、

その違和感に私も足を止めた。



A「夕飯の支度をします」



静かになった部屋からは、

Aの気まずそうな声だけが響いた。



私は気付かれないようにと、

そっとその襖を2cmほど開けた。



春「っ」


想像もしていない展開に、

声が漏れそうになる。


私は咄嗟に

自身の口を両手で覆って、息を殺した。



至近距離で座り込んだままの杏寿郎とA。


少しの風でも吹けば、

互いの髪が触れ合うほどの距離である。



気まずそうに視線を外したAを

穴が開くほど眺める杏寿郎。


彼の表情は今までに見たことがないほど

恍惚としていて、

今すぐにでもAを食べてしまいそうだった。




なんの経験がない私でさえも、

これは見てはいけないものだと

瞬時に察しがついた。



それでも

今更、緊張と興奮で硬直した体を

動かすことはできない。



杏「A」


杏寿郎はそれからふと微笑んで、

Aの方へとその手を伸ばした。



杏寿郎の左手を掴むAの力が

少し強くなったのを私は見逃さなかった。



これ以上は本当に除いてはいけない。

そう目を伏せようとした瞬間だった。



A「んっ……」


杏寿郎は表情を変えぬまま、

自身の掌をAの頭に優しく置いたのだった。



予想外の言動に驚いたのか、

Aの方が一瞬ビクつくのが見えた。



そのまま彼の大きい掌は、

Aの頭を優しく撫で始めた。



杏「A……。

  Aは本当によく頑張っている。

  俺が誰よりも近くで見ている。

今までも、これからもだ」



そうAの耳元で囁く彼の声は、

いつもの数段低い。


彼からこんなにも落ち着いた声が出るのか、

という衝撃が全身を走った。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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