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98 ー杏寿郎sideー ページ4

―杏寿郎side―



暑そうに笑う彼女の額の汗をこの手で拭いながら、

杏「逃げてどうする」

と面白半分で問うてみた。




すると彼女は、俺の薬指と中指を無造作に掴んだ。



A「静かに暮らすんです。

  鬼狩りも女中も辞めです」



俺はまた笑ってしまう。


彼女が真剣そうな表情を見せれば見せるほど

堪えきれない笑いが押し寄せてくるのだ。




杏「そこで、俺たちは一つ屋根の下で
 
  共に暮らすのか」



A「そうです」



杏「…それは夫婦になってしまうなぁ」




俺の言葉に、

ようやく今までの自分の発言の意味がわかったのか

彼女の表情はハッとしたものに変わる。



それが今以上に滑稽で笑えるのだ。




そんな俺に気を悪くしたのか、

彼女は眉間に皺を寄せながら俺の鼻を摘んだ。




笑い吐き出す空気が漏れて、

俺の喉から変な音がする。



その音に吹き出した彼女が

今度は俺よりも盛大に笑い始める。




彼女につられて俺も笑う。




淀んでいた胸がスーッと浄化されるような感覚は

ひどく懐かしいものだった。



目の前にある無邪気な表情に

手を伸ばす。




この頃押さえ付けていたような表情が

徐々に解かれて、


5年前の彼女が

こんな風によく顔を出すようになった。




杏「……いつか、行けるといい。

  鬼のいない国へ」



洋菓子のように艶のある彼女の頬を撫でて

そう笑った。



目を逸らすのではなくて、向き合いたい。

俺はやっとそう思ったのだ。





A「剣は置いて行くんですよ」


その言葉を最後に、

俺の胸へ倒れ込んでくる彼女を受け止める。



杏「……ああ」




俺がAの無邪気な姿を取り戻さなければ。


胡蝶の言葉の意味を少し噛み砕いた俺であった。

99→←97 ー杏寿郎sideー



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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