123 ー春蘭sideー ページ30
―春蘭side―
A「春蘭。
いつでも構わないから、
起きたら私のところへおいで」
そんな今朝のAの優しい声にも
私は返事できずにいた。
布団に篭もりがちになった今、
Aはあまり何も言わなくなっていた。
…別にAに怒っている訳ではない。
それでも、もう帰りたくて仕方がないのだ。
花嫁修行として女中の元で働くなんて、
あまりに過酷すぎた。
Aに少しでも近づけるようにと
努力すれば努力するほど、
その実力差に打ちのめされる。
Aの全てが羨ましくて仕方なくなる。
そしてどうしても
「私じゃAにはなれないのだ」と
そう、悟るのだ。
杏寿郎に優しく頭を撫でられるAが
脳裏に浮かぶ。
この屋敷に来てから、
ストレスで朝まで眠れず、何度も枕を濡らしながら
夜を越えてきた。
……私は弱虫なのだろうか。
千「春蘭さん、和菓子ができましたよ」
襖の向こうから、
そう優しい声がするので
私は慌てて布団から出る。
襖を開けると、
木製の小皿にちょこんと乗っかった豆大福を
手に持つ千寿郎が微笑んでいた。
春「…ありがとう……!!」
このところ毎日のように千寿郎が
気にかけてくれている。
私はすぐに2本の指で豆大福を掴み、
口へと運んだ。
私好みの、強い甘さのこしあんが
口いっぱいに広がると
なんだか千寿郎の優しさに泣きそうになる。
春「…おいひぃ…」
モゴモゴとそう言うと、
千寿郎はまた優しく微笑むのだ。
A「あはっはっは」
不意に奥の部屋から
Aの大きな笑い声が聞こえたので
私は大福を飲むこむことも忘れる。
その後、杏寿郎の盛大な笑い声が
屋敷内を包む。
あまりに突然の出来事に
呆然としていると、
千寿郎も、ふふふと嬉しそうに笑い始めた。
春「……?」
ようやく大福を飲み込むと、
千寿郎はこちらを向いて口を開いた。
千「兄上とAさんは
確かに立派な方です。
誰もが憧れ、尊敬する」
Aと杏寿郎の笑い声が響き合う中、
千寿郎は続けた。
千「しかし、お二人もまた、
一人の人間です」
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時