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120 ー槇寿郎sideー ページ26

―槇寿郎side―


『今回だけは許すわけにはいきません』


夕方、うたた寝をしていた俺は

その声に勢いよく目を覚ました。


心臓がやけにうるさく鼓動するので、

動悸に近いような感覚である。



慌てて辺りを探しても瑠火の姿はない。



寝起きで頭がぼんやりとしていたのか、

彼女の声が聞こえたような気がしたのだ。



馬鹿馬鹿しいなと

そのままもう一度布団に潜り込んだ。



A「春蘭、女中の仕事は何ですか?」



やけに鋭い口調が遠くから聞こえる。



ああ、Aの声だったのかと理解し、

生暖かい布団の中で目を閉じる。



春「……屋敷の生活を守ること…です」



泣き声である。


不審に思った俺は、聞き耳を立てたまま

布団から起き上がった。



杏「A。俺は大丈夫だ。

こっちを向いてくれ」


ここまで焦ったような杏寿郎の声は

聞いたことがない。



つられて少し焦った俺は、

足音を殺して三人の声がする方へと向かった。



その途中、台所では

淡々と料理をする千寿郎の背中が見えた。



その背中に声をかける勇気はなく、

俺は声のする部屋へと急いだ。



開けっ放しの襖から

ようやく三人の姿が見えるので、

俺はバレないようにその身を壁に隠した。



A「それでは、女中が決してしてはいけないことは

  何と教えましたか?」



...おお。

近くで聞くと、なかなかの気迫。



圧倒された。

俺の前では一切見せないAの一面であった。



杏寿郎が彼女の尻にひかれている理由が

今初めて分かった気がした。



ここまでAを怒らせるほど

一体春蘭が何を仕出かしたのか

想像もつかない。



春「……屋敷の方を、傷つけることです」



……なるほど。


彼女は春蘭にそんなことを教えていたのか。



と言うよりも、Aの信念は

これだったのかと知る。



A「もう一度言います。

  今回だけは許すことができません」



再びAの気迫に、正直鳥肌がたつ。



昔は泣いてばかりの小娘だったはずなのに、

いつの間にこうなったのか。



俺は怒鳴る気力もなく、大きなため息をこぼした。

121 ー槇寿郎sideー→←119 ー杏寿郎sideー



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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