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118 ー杏寿郎sideー ページ24

―杏寿郎side―


春「手が….滑ってしまって」



戸惑う春蘭の声を右耳に、

俺は様子のおかしいAから目を離せずにいた。



杏「うむ!構わない!

  手が滑ることは誰にでもあること」


本当に事故だった。


鬼殺隊本部に返事を書くために

春蘭に墨汁の用意をお願いしたのだった。


この年の女の子は、

新しいことにおちゃらけてしまうものだ。



墨汁を見て、少しおどけた様子の春蘭には

俺ももっと注意を払うべきだった。



杏「そんなに気に病まなくていい!」


冷や汗を流す春蘭に、俺はそう言って笑う。



A「よくありませんね」


普段より尖った口調の彼女は

俺の髪を拭きながらそう言った。


A「今回だけは許すわけにはいきません」


彼女がここまで血相を変えるのは初めてである。



春蘭の失敗にはいつも寛容だった彼女からすれば、

考えられない言動である。


どこに地雷があったのだろうか、

とにかくこの場を収めなければ、と

俺は彼女の名前を優しく呼んだ。


杏「A?」


そして優しく彼女の手を握るが、

効果はなく彼女は淡々と続けた。



A「春蘭、女中の仕事は何ですか?」


いきなりの質問に春蘭の震えた声が

ゆっくりと聞こえてくる。



春「……屋敷の生活を守ること…です」



杏「A。俺は大丈夫だ。

こっちを向いてくれ」



どれだけ優しく諭そうとしても、

ここまでスイッチが入ってしまった彼女には

何をしても無駄である。



しかし、どうしようもなく泣きそうな顔をする春蘭を前に

俺は黙っていられなかった。



A「それでは、女中が決してしてはいけないことは

  何と教えましたか?」


言葉に表せないこの威圧感に

耐えられる人はそう多くはない。


彼女には独特の強さがある。

それは俺も重々承知していた。



春「……屋敷の方を、傷つけることです」


予想通り泣き出した春蘭の方向へ、

俺の顔はグイッと向けられる。


杏「んっ…」


どうやら割れた硯の破片で、俺の頬が切れてしまっているようで。


Aは今にも噛みつきそうな勢いで

俺の傷を春蘭に見せている。



……なるほど、彼女の地雷はここにあったのか。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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