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112 ー杏寿郎sideー ページ18

―杏寿郎side―



杏「うむ。承知した。

  楽しみにしておこう」



その言葉を皮切りに、

俺はいつものように風呂場へと向かう。




春蘭の朝食準備は時間がかかるものだと

Aはすでに予想していたようで、


風呂の湯は朝一番に程よく炊き上がっていた。




さすが彼女は頭がいい、と感心しながら

俺は褌の結び目を解く。


そのまま軽く湯浴びをし、汗を流した後、

溢れんばかりの湯の中へ

この身を沈ませるのであった。




杏「……うーん…」





さて。


本当ならさっぱりとした気持ちでいるはずの

この瞬間である。



しかしこの時ばかりの俺は

少し違った。





湯船から浮かんだ白い煙が

窓から差し込んだ日の光に透けている。


それを見上げながら、

俺は一人、考え込んでいた。




……どうすれば俺は

  Aの5年前までの笑顔を取り戻せるのだろうか。




Aが用意した上等の薬湯に、

背中の古傷が少しばかり痛んだ。



俺はできる限り彼女の過去や

トラウマには触れないようにと努めてきた。



事実、文字だけを並べれば

彼女にとって俺は

ただの屋敷の息子でしかないからだ。



そんな俺が彼女に対して

踏み込んだ態度や言動と取るのは

些か気が引けた。




しかし、俺にとってのAは

言うまでもなく女中以上の存在であった。




俺が肉親である母と死別した直後に、

女中としてやってきた彼女。



幼き頃から衣食住を共にし、

更には背中を預けながらの戦闘も共にした。



それだけでも彼女の存在は

他の誰にも代え難いものには違いない。




杏「しかしそれだけではない…」



無意識にでた言葉が、

少し掠れて風呂場に小さく反響するのだった。

113 ー杏寿郎sideー→←111 ー春蘭sideー



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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あいふぉん - 初めまして。とても素敵なお話で一気に読んでしまいました!!煉獄さんが本当にかっこよすぎて夢主が可愛すぎてっっ!!続き楽しみにしています!! (2021年10月5日 0時) (レス) id: 367ee183e7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年8月27日 20時

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