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94 ーしのぶsideー ページ49

―しのぶside―



しのぶ「お待たせしました」




蝶屋敷の中庭に足を運んだ私は、

すやすやと眠る二人に、そう声をかけた。




朝方告げた私の言葉を理解した杏寿郎は、

大人しくこの中庭で待ってくれていた。



縁側で未だ気絶したAを抱き抱えるようにして

その端正な顔のまま、眠りに落ちてしまっている。





夏風に吹かれる二人の気持ち良さそうな寝顔を見ていると、

姉と実弥の関係を思い出してしまう。




庭天日干しされた洗濯物は、

蒸し暑い風に小さくその身を揺らし、

二人を見守るように影を作っていた。




しのぶ「……」



カルテを脇に、

私はAの元へ膝を屈める。




触診するために、彼女の前髪に手を伸ばすと、

その手は瞬時に分厚い手に掴まれる。



杏「……っ」



しのぶ「…?」




何者かがAに触れようとしているのを

敏感に察知し、

杏寿郎は意識のないまま私の手を鷲掴んだのだ。



さらにその間、彼は反対の腕で

Aを自身の方へ抱き寄せる仕草も見せた。



そして自身の勢いから、ようやく彼は目を覚ます。




寝起きでぼんやりとしている杏寿郎と目が合うので、

私はいつもの微笑みのまま

彼の意識が覚醒するのを待った。



杏「む、すまない」



それだけ言うと、彼は私から手を離し、

目を合わせないままその身を起こした。



私は何も返事をせず、

眠ったままのAの触診を始める。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 宇髄天元   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年5月4日 20時

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