90 ーしのぶsideー ページ45
―しのぶside―
蝶屋敷の門をくぐって、屋敷の奥へ進む。
そこに作られたのは、小さな診療室のような空間。
静かに流れる時間の中で、
私は一人、毒の研究を進めていた。
時たま入院患者が私を呼ぶので
その度にこの部屋を後にしていた。
夜間には、Aが鎹鴉を寄越してきたので
20名以上の隠を現場に送り出す作業も済ませた。
そして何よりも
今夜はより強い効果を持った毒を研究していたため
時間が過ぎるのは早かった。
気がつけば、この小さな診療室にも
朝日が差し込んでくる。
あと少しすれば、現場に向かわせた隠も
負傷者を連れて帰ってくるだろう。
Aが応援を呼んだのだから、
何か面倒な血鬼術を持つ鬼と闘ったに違いない。
忙しくなる前に仮眠を取ろうと、
カーテンを閉めて凝り固まった体を伸ばした。
今日は日が沈んでも眠れるかわからないな、
と考えたその時だった。
ドタドタドタドタ
と、明け方には相応しくない足音が
こちらに向かってくる。
仮眠室に向かう足を止め、方向転換する。
それから血管が浮き出てしまいそうな苛立ちを
笑顔で隠し、私は扉を開けた。
しのぶ「朝からお元気ですね」
隠「しのぶ様!!!!!!
実は屋敷前に炎柱様がっ」
朝方には相応しくない声量への不満は、
予想外の出来事にかき消される。
しのぶ「…煉獄さんが、ここへ?」
また何の風の吹き回しだろうか、
と屋敷の外へと出ようとすれば
慌てた口調で隠が続ける。
隠「炎柱様だけではありません、
他の40を超える負傷者も帰ってきています」
なるほど。
かなり早い帰りに、私は色々と察するのだった。
すると私の想像通りに
寝不足の頭には響く声が聞こえてくるのだった。
杏「胡蝶!!!
胡蝶はいるか!!!!」
頼もう!!
と駆けてくるその足音と声に
笑顔を保つのが厳しい朝である。
彼がここまで声を荒げる理由は、この世で一つしかないのだ。
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作者名:わたあめ | 作成日時:2021年5月4日 20時